ロトに当たったからといって。何ができるわけでもない小心者の俺は。当選金のほとんどを銀行に預けた


そして、手元に残しておいた金で。小さなラジオを買った。最近、よくウニョクが。テレビから聞こえてくる音楽にあわせて、身体を揺らしたり。リズムをとったりすることがあるから。でも自分ではテレビは点けない。映像よりも音に惹かれるみたいで


『これがスイッチ』


これがボリューム。使い方を教えて。気に入ったのか、うれしそーに耳を近づける


夜は、特に興味のないテレビをつけっぱなしにはしないで。ウニョクとラジオを聴くことが増えた


ビールを飲みながら。首を揺らすウニョクをながめていたら。めずらしく仕事の電話が入って。ウニョクの邪魔をするのも何だから。バスルームに逃げて。しばらくして戻ると...


『ウニョク?』


ふわっと振りかえった、その白い肌があかく染まっている。床にはビールの缶がころがっていて...


『ウニョク!』


まさか...飲んじゃったの!ゆらゆら揺れる身体を抱きとめて。名前を呼ぶと、ぽやんと微笑む。水も飲んだりしないから。全然気にしてなかった。俺が飲んでるのを見て、興味をもったんだろーか...


『大丈夫?』


髪をなでると。ふぅっと息を吐いて。俺の胸にこてんと頭を預ける。あまり重さを感じない


『これ飲んで』


ペットボトルの水を飲ませて。ぐにゃんぐにゃんする身体を、ベッドに横たえた。ら。え...何故か、俺のシャツをつかんで離さない。両目はもー閉じかけている。困ったな...仕方ないか...


ウニョクの隣りに寝転がる。そーいえば。目を閉じてるの、はじめて見るかも。まつげ、ながいんだな...


妖精と一緒に眠る日が来るなんて、思いもしなかった。あたりまえだけど。童話の主人公になった気分で、目を閉じた



《つづく》


※きのーの最終更新です