『開けてみよ』


始源の指示で、下男が木箱の蓋を開ける。そこには...


『な、なんだこのガラクタは!』


煕右ヱ門が驚きのあまり仰け反った。ガラクタとは失礼だな。キレイなオトコが口元を歪ませる


『俺様が苦労して手に入れた、新世紀福音戦士、阿須賀様仕様の浄瑠璃人形だぞ!』


誇らしげに言い放つその様に、さすがの始源も脇息にのせた肘を落としかけた。こほんと咳払いをして


『価値の如何はわからぬが...兎にも角にも我等には無益なものと見えるな』


『あたりめぇだ。盗人なんてに渡すかよ』


だから謹んでお迎えに参ったわけよ


『おのれ...あの支那人...謀ったか!』


人聞きの悪いこと言ってんじゃねえよ。謀はそっちの十八番だろ


『その支那人ってのはこんなのかぃ?』


細い顎で指し示すその先から、おずおずと姿を現したのはあの日と同じ形をした東海で。やはり二、三日髭を剃るなと厳命されて。その後ろには銀之丞が控えている。と言うより、及び腰の東海を銀之丞が押していて


ぐぬぬぬぬぬぬ...煕右ヱ門が意味のわからぬ呻き声をあげる


『よ、よくもこの越後屋 煕右ヱ門を愚弄してくれたな!そこに直れ!』


へっ。二本差しでもねぇのに、一端の啖呵切ってんじゃねぇよ。それに


『俺様の手の者を軽々しく扱ってもらっちゃ困らぁな』


其の方...


『只の遊び人ではなさそうだな』


始源の言葉ににやりと笑う。それそろ種明かしと行こうか


『西町奉行とは世を偲ぶ仮の姿...』


お...お奉行...!暗がりから戸惑った声がした。


『何!ぶ、奉行だと...』


左様。懐手をして斜に構える。ついと顎を上げて


『西町奉行 金山澈次郎よ』


暗がりから正之進が姿を見せ、十手を構える。銀之丞も東海の前に進みでて、背中に隠していた十手を抜いた


《つづく》


※本日のラインナップ