ても残りあと | 紅塵之外

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あの紐なしバンジー決死の大ジャンプから、数時間が過ぎた。
 辛くも雪崩の魔の手から逃れた僕らは、今度は重力と言う手に捕えられ、さすがにそれには逃れられる事はできず引き寄せられるがままに落ちて行った。
 その狙い通り、雪が積もる山の高層部から中腹までの道のりを、見事一気にショートカットする事に成功させた大魔女様であったが、その反動韓國 泡菜はすざましく、乗員は全員もれなく衝撃と言うダメージを負うハメになり、さらには下山よりも手当が最優先されるというまさに慢心総意の状況に陥っていたため、惜しくも下山には至らず仕舞いで終わった。

 ――――日はついに地平線に接触し、あれだけ蒼かった空が燃えるように赤く染まっていく。
 残念だったな。イイ線行ってたが、もう完全に”タイムリミット”だ。

「こ~ら~! 何やってんの! 今日中に山を下り願景村 洗腦るって言ったでしょ~~!」

 なんでこいつ一人だけピンピンしてるのだろう。あの高さから垂直落下で落ちて行ったのに。
 以下に地竜越しとは言えその衝撃はかなりの物だったはずだ。この体力仕事を生業としている山賊ですら、打撲や打ち身で苦しんでいるのに。
 それは僕だって例外じゃない。あの落下中の短い時間で、ジェットコースターが急速落下する時のような三半規管が宙に浮く感覚にやられ、今の今まで気を失っていたのだ。
 絶叫マシンすらダメな僕にあんな紐なしバンジー、または安全装置なしのフリーフォールをかまされた日には、耐えろと言うの雋景 課程が無理な話なのである。

『も、もう無理でさ~』

「だらしないわよあんたら、それでも山賊!?」

「お~き~な~さ~い~!」

 無茶言うな。仮に彼らが無事だったとしてももう遅い。日の光が照らす猶予はどう見僅かだ。
 夜の山道をうろつくのは危険だと言う事は素人の僕ですらわかるぞ。潔く諦めろ。

「はぁ……くそ、一泊確定かぁ~」

 いいだろ別に。ここの風景はお前の家と似ているのだから。
――――そう、ここはアルフォンヌ山脈”帝都側”下腹部。

 後から聞いた話なのだが、あの高所から着地した後、断崖絶壁を滑るように降りて行き、そのまま木々の群生する山の樹海へと暴走したトラックの如く突入したのだ。
 枝で少し肌を切ったのか、山賊達の至る所に小さな傷が入っている。そして段々と傾斜が緩くなった頃合いを見て、地竜が最後の力を振り絞り、なんとか停止できたのだと。
 その証拠に見て欲しい。僕らが滑り落ちてきたのであろう地竜のサイズピッタリの道が、僕らの後方に何kmと渡って続いている。
 地竜の巨大な体が木々を次々となぎ倒し、地面を抉り、激しい土埃を回せた後、それらが再び地面に沈着しこのような道ができたのだ。
 はは、まさに天然のロードローラーだな。土木業者に就職すれば喜ばれるぞ。