緩和ケア1か月問題とは? | 大腸ガンで逝ってしまった双子の妹の451日の闘病記録

大腸ガンで逝ってしまった双子の妹の451日の闘病記録

2022年8月に54歳の若さで大腸(横行結腸)ガンにより逝ってしまった双子(二卵性双生児)の妹の闘病生活を兄目線で想い出しながら記録として残します。

今回は緩和ケア病棟入院時にI先生より説明を受けた『緩和ケア1か月問題』について語りたいと思います。

 

何の話かというと、入院時の説明において以下のような話がありました。

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I先生:「実は緩和ケア病棟はですね、入院していただいてから1か月前後でお体の状態を見て一回退院していただいて、ご自宅なりどこか別の施設に移って頂く形となります。

 

もちろんお体の状態が悪いのに無理やり出て行ってください、という事は無いんですが、ある程度状態が落ち着いていて横ばいの状態にあるのであれば医療が受けられうような病院や施設に移って頂いて、また状態が悪くなった時にこちらに戻って来ていただく形となります。

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この問題を私なりに調べた結果、簡単に説明すると以下の通りです。

2018年に『長期に入院をすればするほど診療報酬が下がってしまう』という方向に緩和ケア病棟の診療報酬が大幅に改正されてしまったが故に、この『30日退院問題』が発生する事態となった。

 

入院する本人や家族としては、ここで最期を迎える覚悟で来ているのに初日に「30日経ったら退院してもらいます」と言われるとは正直驚きました。

まあ30日間生存できていれば、それはそれで嬉しいことではありますが、仮にその期間が経過したとしても病状は悪くなる一方なハズなので、その状態で果たして他の病院なりに移動する際の身体への影響を含めたリスクって誰が責任取ってくれるんでしょうか?

何より患者さんが一番不安だと思うし『ここから追い出される。』という心理的な悪影響は計り知れないと思うのですが。。。それを見ている家族もとても辛いです。


一方で、病院の経営者層の立場で考えると『患者さんの入院期間は短い方が良く、早く退院させないと病院の収入が減ってしまう』という経営的な問題があると思われます。

緩和ケア病棟はベッド数も限られているので入院や退院には基準があり、長期療養を目的とした入院はできないという建前は理解できます。

入院したけど『最後は自宅で迎えたい』という方はそうすれば良いと思いますが、何らかの理由があって私達みたいに自宅で過ごすことが難しいという患者さんもいると思います。

ですので『緩和ケア病棟は終末期を迎えたガン患者が痛みや苦痛から解放され最期の日までを穏やかに過ごすための施設である』という認識をもっている我々からすれば、一定期間経ったからといって画一的に退院させられるというのはちょっと納得がいきません。

さらにこの制度の改正で、医療関係者の方は患者さん達への制度の説明と、その反発を受けることとなり、本来の医療行為以外の余計な負担が生じてしまっており、病院の上層部と患者さんとその家族の思いとの板挟みになっているため、現場で働く医療スタッフの方々も本当に可哀そうです。

この問題の一番の根源は国が作っている診療報酬制度そのものにあるので、国や政治家にはもっと現場を見て制度設計をしてもらいたいものです。