【2回目の余命宣告を受けた①】からの続き
※自分が診察に付き添った時は必ずスマホで先生の説明を録音していたので、そのデータから文字起こしした診察室でのおおまかな会話内容です。
W先生:「そこで今後の治療方針なんですが、ガンを殺すいわゆる積極的治療は今日で終了し、今ある辛い症状を取ってあげることが治療の目的となります。
今日はこのまま緊急入院してもらって、来週もう一回だけCART療法をやってみましょう。ただ、これが最後のCARTになると思います。それ以降はおそらく腹水が溜まっても『腹水穿刺』といって抜いて捨てるだけになっちゃうと思います。
これでまたご飯が食べれるようになると良いのですが、それでもまだ気持ち悪いとかの症状が続くようであれば、『ステロイド』っていうお薬を飲んでもらいます。
これは一時的なんですけど患者さんの状態を凄く良くしてくれる薬で、息苦しさやダルさが取れたりとかするんですけど、長く続くわけじゃないのね。
だいたい2か月くらいしか効果が無いんですけど、それでも辛さが取れるっていうことは患者さんにとっては嬉しいことなので、まずはこれをやってみましょう。
まず今日入院してもらって緩和の治療を始めて1週間から10日の間に落ち着いたころを見計らって、緩和ケア病棟に移って頂きます。
そこでまたご飯が食べれるようになったとか状態が良くなってくるようであれば、一度退院してもらうことも可能です。」
妹:「分かりました。」(やっと聞こえるくらいの、か細い声しか出せなかった)
W先生:「こっから大事な話で今後の事なんですが、正直言って非常に厳しいです。予後的(余命)には1~2か月だと思ってください。
これからは更にガンの進行が進んでいくから、全身状態はますます悪くなります。
そして今後いわゆる『急変』って言って、最後に状態が悪化してくると体が酸性になって意識が無くなってしまったり、血栓ができて肺に詰まって突然死したりとか、腎臓が悪くなっていって血液が汚れてくると不整脈が起きやすくなってくるんですよ。
そういったことで突然死の可能性が非常に高くなってきます。
このような急変が起き場合に普通であれば心臓マッサージとかをして蘇生を試みるんですが、ガンの終末期の患者さんの場合は既に全身状態が悪化した結果で急変するので、蘇生できる可能性は非常に低いです。
で、何が言いたいかというと、今後急変したりしたとしても病院としては蘇生措置は行わないという事を予めご了承いただきたいです。
また、急変に準ずる心筋梗塞や脳梗塞を合併した場合も、普通であれば他の病院で専門の先生にお願いして治療をするのですが、この場合も当院では緊急でオペをするとかは原則行いません。
これは決して見放すという意味ではなく、全身状態が悪い中で合併症の治療をすることが果たしてベストな選択なのかという事なんです。
ですので、万が一そのような状態になった場合には患者さんの状態を見ながら総合的に判断を行うという事になります。」
オレ:「分かりました。」
W先生:「今日以降はもう抗ガン剤はやりませんから、まずは食べれるようになるか見てみましょう。
今日みたいにあまり食べれてなくて栄養状態が悪い場合は点滴をさせていただきますけど、基本的には腹水が増えてしまうので点滴はやりません。
今日から入院して1週間を目安に今ある辛い症状を取って、少しでも早く家に帰ってできるだけ自宅で過ごせる時間が取れるようになることを目指すのを治療のゴールにしましょう。
あと家に帰ってる間に心配なのであれば、地元で訪問診療などの緩和ケアが受けられるような施設があるかどうかを地域連携室という担当がウチにいるので相談してみてください。」
オレ:「はい、分かりました。後日相談してみたいと思います。ありがとうございました。」
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何となく私の中では今日厳しいことを言われるんじゃないかと予想していたが、予感的中でその通りとなった。
今回の入院で少しでも妹の状態が良くなれば一時的に退院もできそうなので、まずは自宅に帰れるようになることを祈ろう!!
今日は5月13日。奇しくも余命宣告されたちょうど2か月後は『7月12日』。そう、私たちの54回目の誕生日である。(何か運命的なものを感じた。)
妹は診察が終わった後、看護師さんに連れていかれそのまま緊急入院となってしまったので診察の後で特に会話もできなかったが、後日「絶対、誕生日を迎えられるように頑張る!」と力強い言葉を妹から受け取った。
天に召されるまで残り98日