ひじきの五目煮(つゆだく)に
卵を落として巣ごもり風。
これが家族みんなで好き。
しかしこれは、
味噌汁にごはんを投入する、
ねこまんま的な
《迂闊に他者には言ってはいけない》
家庭内料理かもしれぬ。
わたしの母は、
8人兄弟の下から
2番目だったから
嵩増し的な料理が
自分にはしみついている、
と言っていた。
なんにでも油揚げとか
蒟蒻を入れたりとか、
なんでも卵で綴じちゃうとか、
なんでも丼風にしちゃうとか。
娘のわたしはそれを
なんとなく受け継いでいて、
母が亡くなった今も同じようにしている。
思えば、わたしの父も母も
貧しい子供時代で
おとなになっても
親に頼ることは
できない
そんなひとたちだった。
わたし自身も
ほんとうに質の良いもの
ほんとうの美食
ほんとうの休暇や
旅行
などは
とんと知らない。
◯
パートのお昼休みに
読んでいる本。
二日目。
庭の章までがきのう。
きょうはモネと家族のところ。
《桃色の家》
40歳頃までは
絵描きとしての
生活が安定せず
時に苦しい状況の中
家族を養っていかなくては
ならなかった。
たび重なる生活苦から
自殺を考えることもあった。
↑
モネ、庭とレシピ
林綾乃 著より引用
↓
今のわたしと同じくらい。
◯
貧しさを知るひとの
絵や文学が好きだ。
歌うひとも
奏でるひとも。
◯
雨に濡れ
走る
男たちを
鮮やかに書いたのは
須賀敦子だった。
以下、須賀敦子
トリエステの坂道
《雨のなかを走る男たち》
より抜粋引用
顔をちょっとうつむけて、
首をすくめ、まず背広のえりを立ててから
両手で上下の前をきっちりと合わせて、
走り出す。
それを見た瞬間、
私は、ああ、
あの走り方は知ってる、と思った。
ああいう格好をして走るのは、
やはり職人とか工員とか、
そういう階級の人だけではないか。
そういえば、
イタリアで暮らすようになって
ひとつ、びっくりしたことがあった。
学生をふくめて
生活がぎりぎりという階級の男たちが
傘を持っていないのだ」
彼らは
傘をささず
濡れる男たちだった。
須賀敦子の夫
ペッピーノも。
◯
月曜日
日暮れに雷が鳴り
雨が降った。
パートの帰り
わたしは
傘をさして
靴を濡らして歩いた。
◯
夜は酒を飲んだ。
カスバの女を聴いた。
◯
自民党は
総裁を
党員投票無く
決める、と言う。
そう決めた面々は
傘をささない男たち
つまり
雨のなかを走る男たち
では、
決して、無い。
◯
さあ、水曜日。
みなさま、良いいちにちを。
しお