嵐みたいな、朝。
雨が、粒になって
窓硝子を、たたく。
その、硬い音を聴くと
いつまでも、毛布にくるまって
《なーんにも知らぬ
世界がオモテにある、ことも》
なキブンに、なる。
それは、とても良いキブンだ。
夢に、ゴローが出てきた。
夢のなかで
わたしは
冷えとりのお店に
なぜか、裸足で来てしまい
それに、びっくりして
靴下を買おうとしたら
冷えとりのお店なのに
靴下がなくて
あった!と思ったら
それは、手袋や
アームウォーマーで。
致し方ない、と
帰ることにして
夜の川を往き来する
舟に、乗った。
そこへ
待ってくれー、と
黒のROCKな絵と
ロゴの入ったTシャツに
濃紺のジャケット
褪せたリーバイス501を
履いた、ゴローがやってきた。
ヘアスタイルは
名曲《裏切り小僧》を
歌っていたころの長さで
でも、あんなにパーマは
かかっていなかった。
一見、若くみえるけど
いま、の、60才の、ゴローの
皮膚、だったけれど
ぱり、としたジャケットと
長い前髪が
それを、高級な
なめし皮みたいに見せていた。
つまり、かっこ良かった。
ゴローは、すこし
きこしめしていらして
酔っていらして
舟に乗るなり
上半身を
仰向けにどか、と倒すようにして
舟にもたれかかり、
誰もが知っているような
洋楽のメロディーを口づさみながら
Bee Geesだったかもしれない。
抱えているはずのギターを
エアで、かき鳴らした。
夜の川は、おだやかで
船頭さんが、漕ぐ櫓の動きは
規則正しく
たぷたぷ という水音が
光る魚みたいに
ゴローの歌声を追って
舟は、影のように、進んだ。
岸に着き、舟を降りると
街なか、だった。
幹線道路が近いのか
排気ガスの匂いが、した。
つまり、そこはクォリティの高い
ガソリンはまだ、売られていなかった
昭和の、街だ。
舟に乗っていたひとは
みな、来たバスに乗り換えた。
ゴローも。
車内は、座席は
ほぼ埋まっているが
立っているひとはいない
という混み具合で
夜の、
ネオンだけが騒がしい
ひとがまったく見えない街を
とうとうと、進んだ。
しばらくして
バスは速度を落として
大きくカーブした。
ここを曲がれば
街中は過ぎて
暗い山道、へと行く、
そんな予感がした。
そのとき、ゴローが
運転手に、ドアを開けるように言った。
『早く!』
開くと、ゴローは
まだバスが止まっていないのに
飛び降りた。
その先には
古いガソリンスタンドがあって
そこに、仔犬がいた。
リードなどはなく
こころ細気に
曲がってくる車に
近づいては
はっ、と後ずさる、を
繰り返している。
ゴローは、仔犬を抱きかかえ
よく通る声で
飼い主を呼んだ。
なんども、なんども。
しばらくして、
小柄な、ひとの良さそうな
八百屋さんみたいな帽子をかぶった
おじさんが
小走りに、寄ってきて
仔犬をゴローから、受け取った。
その間も、バスは
カーブを曲がり切るべく
ゆるゆると進んでいて
ガソリンスタンドは
見えなくなっていく。
行く先は、草の匂いがする
山の道が、続いている。
白い山百合が、道の端に
ランプのように、光って
咲いている。
発光している。
もう、ゴローは
このバスには戻ってこれまい
と、乗客の誰もが思い
なぜか、みなが
迷子の仔犬のような
気持ちになった、そのとき
『やー、間にあった!』
と、彼が、飛び乗ってきた。
そして、一番後ろの席に
どかっ、と、座り
また、ハナウタを歌いはじめると
わたしたちは
安心して
バスに揺られ続けた。
忘れないうちに
急いで書いたけれど
読みたいひとがいるとは
まったく思えない。
すまぬ。
明日の朗読会。
準備、必死。
うるまちゃんのブローチや
スパニョラさんに展示した
うるまちゃんの絵や
星皿魚皿鳥皿や
cherryさんのBlog
エミさんのBlog
えの字さんの
お布団teaマット&
空飛ぶ絨毯コースターや
えの字さんのBlog
もちろん
はちゃめちゃ編集部の
新しい冊子2冊も
10冊ずつ。
お渡しする紙ものは
あとすこし、足して、
練習しながら、あとすこし。
精いっぱい
やれることを
やれる分だけ。
朝、炒めた新玉ねぎが
美味しくて
娘たちと
取り合って、食べた。
いくつになっても
食いしん坊!
まいにち、変わる
わたしの、人生。
わたしの、ココロ。
はちゃめちゃに真摯に。
空想家sio