昨日見た夢


明け方、夢を見た。

大きな畳の部屋に
大勢のひとがいる。

みな、中年以上、
どちらかといえば、お年寄り。


その中に
赤ん坊の頭ほどの石を
いくつも集めて
机の上に並べている
髪の短い女のひとがいる。

(ふっくらと太っている)

石は、泥で汚れていて
うっすらと苔むしている。


わたしは、その中の
石のひとつが気になる。

なんだか、微妙に
動いているからだ。

目があって、その重い瞼を
時折持ち上げ、様子を
伺っているようだ。

ちらりちらりと
まばたきをする。


わたしは近くにいるひとに

『あれは、蛙じゃないだろうか』

『まさか、石ですよ。 
あのひとはあれで
商売をしているのです』


ひとりの紳士が
石を買いに来る。

くだんの石を
気に入ったようで
さかんに指さしている。

つい、言ってしまう。

『それ、蛙ですよ。
牛蛙です』


大広間がしん、とする。

女が目を剥き、
その石をつかみ、
頭上へと持ち上げた。

石は、ゲコゲコと動いている。


わたしは広間を出ようと
走り出した。

一斉に、

広間にいたひとが
蛙に変わり、

女が、わたしの背中に
スローモーションで
石を投げつけた。

牛蛙が手足を広げ
わたしへ向かってくる。



はっ。

そこで、目が覚めた。


あまりに、はっ、と息を吸ったので
オットー氏が飛び起きて


夢だよ、夢だよ

とわたしを揺すった。


(sioはよく夢を見て
泣いたり、笑ったり
わめいたりするので
オットー氏は、慣れている)


寝ぼけながら
たった今見た夢を話すと

『あなた、蛙が怖いもんね』

とオットー氏は言った。



小学生の頃のハナシ。

そう、そうだった。

小学生の頃、

ある男子が、

『巨大な蛙を
捕まえた、みんなで飼おう』

と、クラスに持ってきた。


本当に大きなやつで
わたしは、とても怖かった。 

男子が持ってきた
プラスチックの水槽いっぱいに
手足とその大きな顔を押し付け、

じーっ、とわたしたちを見ていて

その目つきと赤い体が
なんとも、嫌だった。



先生も不気味に思ったのか

『これは逃した方が
いいんじゃないか?』

と言ったが、


男子たちは、
夏休みが来るまで、と
先生に懇願した。


理科の研究にする、とか言って。


どうやら、放課後には
水槽から出し、紐をつけて、
池で遊ばせて、

えさをやるつもりらしかった。


蛙が来て、一週間ほど経った朝
わたしは教室に一番に登校した。

朝、授業前に
野球をやりたい男子がいて
異様に早く集合する通学班にいたのだ。


なんとなく、
教室に変な静けさがあった。

今、思えば
それは予感だったのだろうが

わたしは席につき
ランドセルの中身を
机にしまった。


ふと、
窓際のロッカーの上の
水槽を見た。

空だった。

からん、と
蓋が床に落ちていた。


わたしは、息を詰め立ち上がった。

蛙はどこ?



その時、ひとりの男子が
教室に入ってきた。


小声で言った。


『蛙が逃げた』

『うそっ、俺
あれは捕まえられない』

『もう、外へ逃げたかも』

『それならいいけど』


ふたりで怯えつつ、

それでも、男子は
ランドセルを下ろし
自分の机に
教科書を入れようとした。

男子の動きが止まった。


『なあ、俺の机に
なんか、いる、かも』

『なんかって?』


こどもというのは愚かだ。

わざわざ、ふたりで
机の中を覗き込んだ。


蛙がさかさまに
机の中いっぱいに
広がっていた。

ギョロリと
わたしたちを見た。


ギャー!

わたしたちは叫び
その叫び声に

巨大蛙が飛び出した。

ぼよんと顎と胸に蛙が当たった。
生あたたかく、臭かった。


わたしは走った。


走って走って、
校庭まで行って、泣いた。


その後、やってきた男子たちと
先生によって

一時間目を潰した
大捕物となり、

蛙は元居た池に戻された。





あれから、sioは
時々、蛙の夢を見る。

あの朝から
40年近く経っているのに。


人の記憶って、不思議だ。




蛙嫌いのみなさま
変なハナシをして、ごめんね!



{7EFE6A87-5B76-4F4A-88BF-3D8B1162A162:01}

*あ、でも、絵本に出てくるかえるは好きよ。
これは、こどもの頃、好きだった、
【火よう日のごそちうはひきがえる】
(ラッセル E エリクソン 作
ローレンス D フィオリ 画
佐藤涼子 訳)





それとおしらせ!

今夜の深夜 1時5分
NHK総合 コヤブTUNES
ROLLY坊ちゃんが
出演しますよ。

お笑い番組のようです。

もしよかったら、観てね。



sioでした。