私の顔を見るなり
開いて見せてくれた
白い包み紙のなかの たい焼き
「どこどこの名物らしいよ」
会社の誰かのお土産みたいで
お昼にもらったものは
夕方には 冷たくなっていた
「わおっ」
私が たい焼きを好きだろうと
持ってきてくれたんだ
その人は
からだのことがあって
あまいものが 食べ難い
決して あまいものが嫌いなのではない
食べたいのに 食べられないって
どんなに 悲しいだろう?
どんなに 悔しいだろう?
それを 私に届けてくれた
「○○がおらんうちに」
そう 私に言って渡してくれた
冷たくて かちかちになった たい焼き
あたためなおして
食べる気にならなかった
あたためたら
さめるような気さえする
冷たいたい焼きを
湯気が出るような気持ちで両手で持つ