望郷の父・・・29 父の背景「だれか、その子を抱きしめて」 | 魂の選ぶ声を聴く ~言葉にならない想いをつなぐ~

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望郷の父・・・目次

 

 

ある正月に

 

おとずれた私に父が聴かせてくれたのは

 

幼い頃の父と祖父の話だった

 

 

祖父は 閉鎖された地区での、地主のような家の本家の家長

 

親戚筋や近所の家々の主として

 

人々の生計を守っていかなければならなかったようだ

 

幼心に 子どもたちにも

 

父親が背負っているものの重さは 感じられるようだった

 

その重圧を晴らすところは

 

お酒と 弱い者への暴力だった

 

酒を飲んでは くだをまく

 

親戚が集まっては、まさに「修羅場」となるのを

 

私も 幼い目で見て育った

 

 

祖父は お酒がなくなると

 

父を呼びつけて、お酒を買いに行かせたらしい

 

いつもいつも その役目は 父の兄でもなく弟でもなく

 

父だったそうだ

 

 

しかも、お酒のお代は持たせてもらえずに 行かされたらしい

 

お金も持たずに 時間を問わずに

 

お酒を買いに行かされることが

 

父にとっては かなりの屈辱だったらしい

 

真冬の、雪のなか 出て行かなければいけないこともあったらしい

 

 

このときの悲しさ、つらさ、さびしさが

 

幼い父に 刻まれたのだろう

 

 

 

父は 泣きながら、私に語った 

 

私は 私の感情をはさまず、父の話を聴き 父が泣くのを見ていた

 

 

泣いている父の姿は 小さな男の子にしか見えなかった