(1/4)
クックック。ごきげんよう、読者諸君。
お久し振りだな、私だ。
ダークネス・タイガーだ。
リトラ? 違う、その名は捨てた。
何がなんだか分からないという顔をしているな。
おっと皆まで言うな、私には分かるのだよ。この封印されし魔眼をもってすれば造作もない事だ。
中二病? 違う違う、そうではない。
おい、違うと言っているだろう。引くんじゃない。
やれやれ、仕方ない。私がトーラムを離れていた空白の二週間について、よーく聞かせる必要があるようだな。
ただし忘れるな。深遠を覗くとき、深遠もまたおまえを覗いているのだ……
(2/4)
とあるギルドの宴会場に、その夜は大勢の人が集まっていた。
歓談する者、目をギラつかせている者、そして笑顔を浮かべつつも内心に闘志を滾らせている者。
これから始まるのはただのギルドイベントではない。一億五千万もの賞金を懸けた仁義なき謎々クイズ大会なのだ。
ピシャリとふすまを開け放ち、上座から司会が登場する。
大会のルールが説明されていく。クイズは全部で二十問。後半ほど難易度と賞金額が高くなり、最初に答えを言った人が正解者となる。
「賞金は全部私のモンだぜぇ~!」
私は雄叫びを上げた。
クイズ大会が始まった。
*
手元に視線を落とす。そこはからっぽで何もなかった。大会が後半に差し掛かっても、私は未だに一問も正解できないでいた。
私はその宴会場の最前列で、誰かに「正解おめでとう」を言うたび、自分で自分の首を締めるような感覚をずっと味わいながら、早く時間が過ぎ去ることを願っていた。
ご多分に漏れず、私も自分のことを出来のいい人間だと思っていた。そして、その思い上がりは粉々に打ち砕かれた。
私は死ぬほどみじめな気持ちで家路についた。
マイルームに帰ってきた私は、糸が切れたようにソファに倒れ込んだ。クッションに顔をうずめて、モゴモゴと叫び声を上げる。
私も昔はすごかったんだよ。小学生の時とか、いつもテストで100点だったし。クイズとか謎々とかミステリとか、すごい好きだし。めちゃくちゃ自信あったし。でも、なんかもう分かんなくなっちゃったよ。
その時だった。
『チカラが欲しいか……?』
突然、寝転んだ私の後ろから、つまり上から囁く声がした。
反射的に、体を捻って仰向けになる。
「うわあっ!」
『わっ、脅かすな!』
目と鼻の先に、知らない女の顔があった。
彼女が驚いて飛びずさる。私も慌てて飛び起きて、お互い弾かれたように距離が空く。
そこでようやく、その人物の全身が視界に入った。
黒を基調としたフリルだらけのドレスに身を包んだ、年端もいかない少女。
髪は眩しいくらいの銀。
瞳は赤色で、左目は白い眼帯で隠されている。
いわゆるゴスロリというやつだろうか。
私がますます困惑するのを余所に、少女は半身になってよくわからないポーズを決めた。クックック、とわざとらしく笑う。
『膨れ上がった自尊心。心の中ではいつも他人を見下している』
その言葉に、ドキリと心臓が跳ねた。私の事を言っているのだろうか。
『肥大したプライド。自分より優れた人間の存在を許せない……』
「黙れ!」
絶叫と同時、私は円盾を掴んで少女の顔面に向けて投擲していた。
しまった、と思うがもう遅かった。
起こる惨劇を想像して目を細めるが、そうはならずに、少女の体が空に溶けるようにして消えた。円盾がドガァンと派手な音を立てて、後ろの壁に大穴を開け、部屋を揺らす。
『すべては劣等感の裏返し。人に弱みを見せることができない』
後ろから少女の声がした。ハッと振り返ろうとしたが、それを制すように、どこから取り出したのか私の首に大鎌が添えられる。
心臓を冷えた手で鷲掴みにされたように、体がすくんで動けなくなる。この鎌は私の首に当てられているんじゃない。魂に直接刃を突きつけられているのだと、感覚で理解した。
「お前は、何なんだ」声が震えた。
『よくぞ聞いてくれた。我が名はダーク。世界に闇を満たす者だ』
背後でちょっとドヤッとする気配があった。決め台詞なのだろうか。
ダークが私を解放した。だが足に力が入らず、床に膝をついて四つん這いになる。
『そう邪険にするな。言っただろう、チカラが欲しいか、と』
ダークは甘い声で滔々と話し続ける。
『チカラを望むなら、その本を手に取るがいい』
床に真っ黒な本が置かれる。表紙どころかページすらも黒色で、タイトルは無い。
「何コレ、辞書?」
『それは暗黒の書。ワタシの設定しゅ……じゃなくて! そう、伝記だ!』
逡巡の末に、私はその本をガッと掴んだ。分厚く、ずしりと重い。
顔をあげる。ダークと目が合う。
『よしよし、いいぞ! では、次はコレを着けろ!』
ダークは楽しくて堪らないというような高い声を出す。何かを取り出し、私に手渡す。
白い眼帯だった。
言いたいことはあったが一旦、素直にそれを着けてみる。
「何も見えないですね」
眼帯は左目用だったので、私は抗議してみる。
しかしダークは、何故か『ふんふん、ほうほう、へぇ!』と鼻息を荒くして私をためつすがめつ眺めた後、『逆にアリだな』と呟いた。
「え?」
『だからアリだって、採用。これでいこう』
「さいですか……」
『よし、貴様は今から闇の猟犬 ダークネス・タイガーだ!』
というわけで、今回は壁でダークパワースキルを使っていきます。
それではどうぞ。
(3/4)
ダークパワーには八つのスキルが存在します。
その中で壁に有用そうなものは以下の四つ。
【疲労付与】デーモンクロウ
【体力上昇】ナイトメア
【無敵】ソウルハント
【超強化】リグレット
今回はスキルリセット期間を活用して、ダークパワーから壁に使えそうなスキルを見つけよう。という企画です。
トップバッターはデーモンクロウ。

現状唯一の疲労付与スキル。
説明文には書かれていませんが、ちゃんと疲労効果があります。
疲労は安定率を半減させるらしく、要するにだいたい被ダメ-25%です。
しかも割合攻撃までちゃんと軽減する。
これは間違いなく強いですね、もう使う前から分かる。絶対強い。
……のですが、コイツは発動条件に難がありました。
最大HPに対し、現在のHPが減っているほどダメージと付与率が上昇する性質があります。
壁でHPを低く保ちつつ戦う、というのはどう考えてもナンセンス。せっかく敵の安定率を下げても、それでは本末転倒。
というわけで、残念ながらコレは不採用。
ヘイトも発生しないスキルなので、壁で使うのは諦めろという事なのでしょうね。
火力さん、余裕があればデーモンクロウ、お願いします。
これまた記載はされていませんが、最大HPがひっそり上昇します。
壁として目を引くのはこちらの効果ですね。
・最大HPが基礎HPの20%上昇
・2秒毎に現最大HPの1%ダメージ
・HP消費時にMP10分のヘイト発生
ヘイト効果があるの、普通に知らなかったです。ネタ枠のつもりで入れてみたんですが、意外と使える疑惑が浮上。
しかし、やっぱりデメリットが大きい。
仮にvit極の体力特化型で使用すると、HP+6000の900ダメージといった感じになるはず。割に合っていない。
agi壁なら体力はほぼ増えずで200ダメージくらいでしょうか。けっこう馬鹿にならない。
ベアハンドスキルと組み合わせれば、回復気功がスリップダメージを打ち消してくれます。ヘイトが低くなりがちなこともあり、運用するなら熊手壁ですね。
しかし実際に使ってみて、有っても無くてもそんなに変わらない。やはりソウルハントの為のスキルなのか。
いっそダークパワースキル全取得でナイトメアの防御減少効果を最大にするのなら採用していいかもしれません。熊手壁はスキルポイント余りがちですし。
とりあえずコレは保留。次へ行きます。
こちらも説明文にはありませんが、スキルの後半に無敵時間があります。これが目当て。
というか、さっきから書いてないこと多過ぎじゃないですか? 何でダークパワーはこんなに不親切なんだ。
そんで無駄に意味深な台詞は赤文字で書いてある。いい加減にしろ。
さて、ソウルハントには無敵時間があるという話でしたね。
これがベアハンドと相性良しではないかと考察しています。
熊手壁は盾を装備できないのでPDが使えません。代わりの無敵スキルとなり得ます。
しかもPDと違って敵の攻撃がmiss扱いになるので気功が削れません。
しかし無敵時間は短く、発生までにタイムラグがあり、消費MP400と多いです。これなら素直に殴られた方がいいかもしれない。
というかやっぱり熊手壁に無敵はいらない気がしてきた。
コレは微妙ですね。惜しいけど使わなさそう。
さあ、次はいよいよ最後です。
大トリはリグレット。このスキルには一番期待しています。
というか、この存在が気になってダークパワーを使ってみました。他は正直オマケです。
そのスキル性能は一回使う毎に、
・最大基礎HP-10%
・物魔耐性+10%
・攻撃MP回復+10
・HP全回復
・重ね掛けに制限がない
といったもの。agi型の壁とめちゃくちゃ相性が良さそうですね。
しかし当然ダークパワーなので、とんでもないデメリットがあります。
・効果時間が切れると死亡する
・効果時間は重ね掛けする度短くなる
・死亡時の蘇生・頑張る・復活の雫が使用不可
このスキルの恐ろしい所は、240秒後に必ず死ぬという事。
最初は30秒から始まり、重ね掛けの度に28、26、24……2、0と効果時間が短くなっていきます。
時間をフルに使って四分なので、実際には三分といったところでしょう。
これが16回目のリグレットの様子。発動と同時に死にます。
代償は大きいですが、私は「使える」と判断します。
耐久力は大幅に上がるし、一回の攻撃でMPが100以上回復するようになる。使わない手は無い。
そして実際にギルドレイドで、熊手壁で試してきました。
なぜ熊手壁かというと、agi型でありながら耐久力が非常に高く、「リグレットを使ったのに死んでしまった」という状況になりづらいから。
またギルドレイドには三分の時間制限があり、「どうせ死ぬんだから」という気持ちで心おきなく使えます。
さて、その使用感ですが……
強いです。
めちゃんこ強かった。想像以上です。
特にHP回復が意外と優秀でした。というか、こっちをメインと言ってもいいくらいです。
最初からバフ目当てで使うのではなく、回復スキルだと思って使えば制限時間もちょうど良さそうな具合でした。
消費MP200でモーションも早いHP全回復スキル。これが超優秀だと今まで何故気づかなかったのか。
なんならvit型にも導入したいくらい気に入りました。スキルの相性は一見悪いけれど、事故の多いagi型よりもリスクが少なく、大量のHPを回復できるので強いかもしれません。
では、そろそろ今回のまとめです。
とりあえず実戦投入するのはリグレットだけにしました。
熊手壁に導入しましたが、間違いなく大幅に戦力がアップしています。無敵感がすごい。本当に耐久力だけなら怪物級ですね。自分で使っててちょっと引くレベルで硬いです。
また記事を書くにあたって、先人が検証してくれたデータを使いました。
この場でお礼申し上げます。
さて、全部のスキルを紹介したので、これで終わり。それではエピローグです。
(4/4)
「素晴らしい、力が溢れてくる!」思わず笑みがこぼれる。
ダークも釣られるように、薄く笑う。
『よし、行くぞ! 手始めにかつての仲間達をその手に掛けるのだ!』
最高の気分だ。私は足を踏み出す。
ゴンッ
フラフラ……
ガッ ドサッ
「…………」
壁に頭をぶつけ、階段から転げ落ち、そのままピクリとも動かなくなる。
恐る恐るといった感じで、ダークが声を掛ける。
『だ、大丈夫か? 立てる?』
「…………!」
がばりと跳ね起きた私は眼帯を引きちぎり、明後日の方向へぶん投げた。風に乗って高く舞い上がり、民家の屋根を超えて消える。
『何をしている、†混沌より深き闇の猟犬 ダークネス・タイガー†!?』
「その名は捨てたよ、私はリトラだ!」
両の眼で正面からダークを見据える。
閉じていた右目が、開いた。
「もう目は逸らさない。転んでも立ち上がる。そんな時に手を差し伸べてくれる仲間こそが、本当に大切なものだったんだ」
『せっかく仲良くなれると思ったのに……』
その瞬間だけ、ほんの少し、心の底から。
ダークは寂しげな表情を見せた。
『また、遊びに行っていいか!?』
「待ってる!!」
踵を返して、私は歩き出す。
一歩一歩、階段を踏みしめる。
後ろは振り返らなかった。
私は、前進する。
私たちの冒険は、これからだ!