その後、骨董市、東京古書会館や古書店、Yahoo!オークション等で、全国各地の名所絵を続々と発見・救出しました。しかし、「名古屋名所」はマーケットに姿を現わしません。出て来ないのです。

 

そこで、それまでに発見した「ご当地シリーズもの」を分析・検証してみました。そうすると、版元は一箇所ではなく、絵師も一人ではなく、画風もそれぞれバラバラです。さらに木版刷りではなく、ほぼ多色刷り石版画でした。

△石版画 伊勢名所 二見が浦乃景(明治35年刊)

△石版画 伊勢名所 内宮 天照皇大神宮(明治35年刊)

 

そこには、一定のルール・規格が存在するように見えます。少し整理してみます。

 

〈明治名所石版画の規格〉

規格(1) 組み物であり、六枚、八枚、十枚、十二枚、二十枚といったシリーズもの

規格(2) 紙の大きさは、浮世絵中判(B5版、約27×19.5cm、よく見られる浮世絵大判の半分サイズ)

規格(3) 紙は浮世絵と同等の高級な和紙に印刷(西洋紙でないので、今でも全く劣化なし、凄い!!!)

規格(4) カラフルな多色刷り石版画(木版ではない!!)

規格(5) 名所絵の構図では「小間絵」が右上か左上に配置(小間絵とは小形の挿絵、カットのこと)

規格(6) それらが外袋に入れられ、名所各地の土産屋さんでお土産品として販売

規格(7) 明治20年代終わりから明治30年代にかけ発行

規格(8) 外袋は縦型デザインで、その中に横型デザインの名所絵が複数枚入っている

 

△外袋 伊勢みやげ 名所八葉

 

 

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