コナンが言葉を終えて、少しの間が空いた。そして、平次は大きな溜め息を吐いた。

「……まぁええやろ。で、お前と毛利の姉ちゃんと俺だけで集まるんか?」
「いや、灰原も来るって言ってたよ。」
「ほんで俺も呼んだってわけかいな……」

溜め息混じりに言う平次にコナンは言いにくそうに口を開いた。

「とりあえずわかったわ。で、その姉ちゃんとはどこまでいったんや?」
「どこまでも何も……まだ何にもねえよ。それよか和葉ちゃんとはどうなんだよ。」

コナンが出した名前にドキッとした平次は飲んでいた水でむせた。しばらく咳をしたあと息を整えた平次は、何か面白そうだという顔をしていたコナンをジッと睨んだ。

「何もあれへんわ。」

少しの苛立ちと少しの照れ隠しが伺える平次にコナンは若干含みのある笑みを浮かべた。

「……なんやねん」
「いや、何でもねえよ」

ククッと喉を鳴らすコナンに肘をついて横を向く平次。しばらく時間をおいて、コナンは口を開いた。

「後は蘭の都合次第だな。あいつもそんなに暇じゃねえみたいだし……」
「ちょっと待て、なんか俺が暇そうな言い方やない。」
「いや、実際暇だったろ?」

笑いながら言うコナン。

「まぁええわ。毛利の姉ちゃんとちっこい姉ちゃんの予定だけ決まったら連絡くれ。場所は大阪でええやろ?」
「みんな服部の家に泊まるのか?」
「いや、毛利の姉ちゃんは和葉んとこに泊めたらええやろ。最悪帰りは別々でもええやろうしな。」

なるほどと考え込むコナン。そんなコナンに顔を近寄らせながら平次は続けた。

「この前ええ店見つけてん。三人共招待したるわ。」
「それはいいんだけどよ……灰原はどっちに泊まるんだ?」
「ああ~……お前と一緒でええんちゃうか?」

考えていなかったのかと溜め息をつくコナン。

「なんやねん、急に呼出しよって……こっちもそんな暇やないねんぞ」

今や大学生になった服部平次がそうぼやいた。その向かいにいる江戸川コナンは何かを言いにくそうに頬を掻いた。

「ほんまっ……訳わからんやっちゃな……」

平次は目の前に置かれたカレーをガツガツと食べはじめた。一方のコナンはコーヒーが目の前に置かれているだけで、まだほんのりと湯気も上がっていた。

「悪い悪い。ここのお金だすから、な?」
「アホかっ。何で俺がガキに奢ってもらわなあかんねん!」
「なっ、俺だって本当は……」
「今はガキやろ」

そこでコナンは口ごもった。一方の平次は少しコナンを観察した後、軽い溜め息を吐いて残ったカレーを一気に食べ上げた。

「服部…俺、蘭に本当の事を話そうと思ってんだ。」
「……まぁそれもええんちゃうか。一応あいつらの驚異も去ったみたいやし……それより、あのちっこい姉ちゃんの許可は出たんか?」

そこでもう一度口ごもるコナン。そんなコナンの様子に苛立ちと違和感を覚え始めた平次は、少し語気を強めながら言葉を出した。

「なんやねん、はっきりせんやつやな。ちっこい姉ちゃんと喧嘩でもしたんか?」
「いや……むしろその逆なんだ。」
「逆っつうと……喧嘩したんは毛利の姉ちゃんの方か……でも喧嘩して正体話すってのもおかしいよな……」

少し溜め息気味に平次を見たコナンはゆっくりと口を開いた。

「俺、灰原と一緒になろうと思ってんだ……」
「……はぁ?ちょっ待て!」

平次はバンッと立ち上がるとコナンをジッと睨んでいた。今にもつかみ掛かりそうになる右手をグッと握りしめ、自分を押さえ付けた。

「……それ、ホンマに言うとんのか?」
「……あぁ」

コナンの真剣な瞳をジッと見る平次は、やや間がたってからイスに座った。

「……まぁ好きにしたらええわ。俺にはおまえの気持ちはわからんし、自分で決めたんやったら特にどうこう言うつもりもあらへん。で、いちいち俺をこっちまで呼び付けたんはどういう意図や?」
「まだ正確な日時は決めてねえんだけど……おめえに立ち会って欲しいんだ。」

「もし……おめえがそれを罪だと思うのなら、俺は…俺もその罪を背負ってやる。」
「……あなたはそう言うと思ってた。だけど、これは私の責任なの…それに、あなたをこれ以上苦しめたくないの……だから…」
「俺は……俺もこれ以上苦しむ姿を見たくねえんだ。それに、誰もおめえを責めたりなんかしていないし、誰もおめえを責めない。俺や蘭、明美さんだって……」

コナンの表情に少し小さく溜め息をもらした灰原はまた小さく口を開いた。

「そうね……私を一番許せないのは私自身でしょうね。あなたがそう言うのもわかってはいたし、きっとお姉ちゃんも同じことを言うわ…だけど……」
「なら……おめえが自分を許せるような理由を探してやる。」

言葉に力がこもる。少しずつだが、コナンに自信が戻って来ているのが言葉から伺えた。そんなコナンに小さく胸の高鳴りを感じていた。

「探せるかしら、名探偵さん?」

溜め息混じりに小さく、イタズラっぽく笑う灰原。

「見つけだしてやらあ。必ず……」

自信満々に宣言するコナン。こうなっては手が付けられないと溜め息を漏らす灰原。

「灰原、俺はおめえの事が好きだ。」

脈絡のない言葉に少し呆気にとられる灰原。やや時間を置いて、頭が言葉を理解していくと同時に顔を赤くしていく。

「俺と付き合ってくれ」

少し間を置き、深呼吸をして気持ちを整える。そして、真剣な顔を作って静かに答える。

「彼女が……蘭さんがそれを許してくれるなら考えてもいいわ。」
「っ……約束だぜ」

灰原は溜め息混じりにコクリと頷いた。