お菓子の家、クリスマスを過ぎたらどうなるんだろう@無印良品有楽町店 | 桃色テラス

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$桃色テラス-おうちがたくさん
無印良品有楽町店にお菓子の町が出現している。とは言えクリスマスイベントなので、展示期間は明日(2012年12月25日)までなのだとか。
無印では「お菓子の家」(ヘクセンハウス)が簡単に?作れるキットを販売しており、毎年毎年見る度に欲しくなるほど。沢山の沢山のお菓子の家が建ち並ぶ、メルヘンティックな町並みを眺めればついつい帰りに買ってしまっても仕方がない。よ、商売上手。

私が訪れたのは12月の上旬の夜。クリスマスの気配を漂わせてラッピングされたように華やかな町並みはどこか気ぜわしく、多肉植物を求て彷徨する私と仕事仲間は、少しだけ居心地が悪かった。
チョコレートか、クッキーか、その両方なのか。広いフロア中は甘く蕩けるようなバニラの香りで満たされていた。

多くの人が周囲を囲みカメラを、スマホを構える。私もご多分に漏れずデジカメを取り出す。ガラスケースに入れられることもないむき出しのお菓子の町並みの合間を、おもちゃの汽車がこれまたお菓子を積み込んで走り抜ける。
桃色テラス-プラレールがぐるり
桃色テラス-橋のある川

このお菓子まちは、クリスマスを過ぎたらどこへいくのだろう。
多くの人がたかり、ほぅとため息を漏らしヨダレをたらし(たかもしれず)、店内が幾らキレイでも埃が積もり、夢の家の外壁を成すクッキーは湿気を含む。
私が見た日から数えても20日は経過している。どう考えても美味しくないし衛生面からみても口に入れるべきではないだろう。
かつて「食べ物」だった夢のようなお菓子の町。

たくさんのクッキー、たくさんのチョコレート。
美しく愛らしい町並み、むせかえるほどの甘い香り。

お菓子の町は24時間ネット中継されており、ハッシュタグ「#mujixmas」も設定されている。タグ付きでTWEETすればそれが中継画面のサイドなどに反映される仕組みだ。無印のメインターゲットは20歳~30歳台の男女だと言われており、子育て世代も含まれる。夕方過ぎの有楽町店で目につく客はもちろん「仕事帰り」といった風貌の方ばかり。スマートフォンで夢の町を撮影し、アップロードして、いくつかのイイネを手に入れて、少し得意になる。
もしも、この町並みがガラスケースの中に収まっていさえすれば、私もたとえば Instagramを経由して Twitter や Facebook にシェアしていただろう。
桃色テラス-人もいるのだ

商品として無印の店頭で販売されるお菓子の家は、私たちの遊び心に訴え、郷愁をくすぐって、連れて帰られることに成功しなくてはならない。

だから目眩がするほどの甘い香りが必要だった? ケースにしまわずに、フロア中になみなみと満たした、少し苦くてあとは甘く甘く、正気の端を溶かしてしまうような香りが。
ヘンゼルとグレーテルが思わずつまみ食いしててしまったお菓子の家の数々、夢に見た家の数々が目前に広がり、しかしオトナとなった今なら容易く夢のかけらを手に入れることが出来る。
持ち帰られた夢は、夢を待っていた子どものお腹に収まるのだろうか。もしくは、オトナ同士のパーティーに彩りを添えるのか。
グレーテルは魔女を竈で焼き殺し、お菓子の家を後にした。
では、有楽町にのこされた、お菓子の町は?
桃色テラス-広い広い町

今日の夕方、J-WAVEを流していたら石井竜也氏がゲストとして登場し、新曲のクリスマスソングをフル尺で初オンエアだと紹介していた。辛気くさくなく、みんなで騒げるような曲にしたかったのだそうだ。
曲の内容もインタビューもうろ覚えだけれど、世界中にはいろいろな境遇の子ども達がいるから、“お母さんお父さん”や、“家族”という言葉を使わないようにしたと話ていた。子ども達に等しくクリスマスが訪れるといい、と。
DVのセミナーで聞いた児童相談所の方の話が蘇る。安心しておうちにいられない子達。クリスマスは果たして等しくやってくるのだろうか。そんなわけないって、みんなどこかで知っている。

同じ「ありあまるほどのお菓子の家を組み立て提示する」プロモーションであっても、もう少し違った演出は出来なかったのだろうか。無印良品なら幾らでも出来たはずだと思うほどにはスキなのだ。
たとえば。今年のクリスマスをハッピーに過ごせない子どものしんどさを、ほんの一時だけでも和らげる力をお菓子の町は持っていたかもしれない。
10年後、20年たったあとも、お菓子の家のうれしさを覚えていて、無印のことが大好きな大人に育つようなイベントだったら、今オトナの私も手放しで嬉しかったはずなんだ。
話題をこさえて来店を促して、仕事に疲れたオトナの郷愁と少しの見栄をくすぐって財布を開かせた夢の町。一夜明けたら焼却炉に放り込まれるような道を選ばなくても良かったじゃないか。


$桃色テラス-オトナが夢中
写真は2012年12月5日に撮影

*CSRとセットで考えればよかったんじゃね?という話。長い。
*チョコもクッキーも大好きです。子どもの時に組み立てたお菓子の家は、本当に素敵だった。食べてみるとたいしたことは無かった気がするけど、とにかく嬉しかったんだ。
*食べ物を粗末にしてはいけません、と言われて育った世代です。
*20歳になるころにチェーンの居酒屋でアルバイトをして、「日本が不景気なんて嘘」だと思ったんだよ。みんな食べ物残しすぎ、捨てすぎ。特に年末はひどいよね。宴会シーズンなんて最低。ワカモノよりオッサンのほうが酷かった。食べないなら頼むな。