通りがかりの車の方に、「なにしてるの?」と聞かれたので、カメラをお見せして「写真をとってるんです」と言ったのですが、ヒールのサンダルが痛くて脱いでしまったこともあり、どうやら通報されてしまいました。明け方で電車の間隔もあいていたしと思ったけれど、確かに端から見れば不審だったよねと本気で反省しています。
ただ、不謹慎だけれど、今になって思えば見過ごさないで居てくれたことが嬉しい。
道路を挟んだ向こうから「警察よんだからね」と言われて、「えええ!?」と驚いたモノの、逃げるわけにもいかず、申し訳ないやらお恥ずかしいやらでございました。通報した車の人は去りゆき、踏切から出て、振り返る。
薄青い空に黄色と黒のポールがそびえる。
ここにいたって情けなさマックス。
間もなくパトカーがやってきて、私に対応してくれたのは、かわいらしい顔の若い警察官でした。その方と、もう一人年配の方に事情を説明しカメラをお見せしたものの、「まぁ、通報されちゃったし、自殺の疑いもあったということでね、念のため署まで来て下さい」と、パトカーの後部座席にのりこみました。
自殺をするなら、もっと確実な方法を選びます。
そう弁解しようとして、やめた。
どのぐらい時間が掛かるんだろう。
この人達の時給に換算すると幾ら分無駄にしてしまったんだろう。
そんなことを考えながら、一言断って同居のパートナーに事情を説明する電話を掛けた。
![$桃色テラス](https://stat.ameba.jp/user_images/20120708/17/lisafuzzy/db/ed/j/t02200165_0400030012068842931.jpg?caw=800)
署についてから、パトカーのドアを開けたり、行く先を説明してくれたりする警察官の仕草や態度が、あまりにも紳士的でここに至っても恐縮しきりでした。
受付のソファには先客がいたので、通路であらためて事情を聞かれたのですが、終始本当に物腰が柔らかい。
通りすがりの怖そうな年配の刑事さんに「ダメだぞ」と強くしかられたあとも、フォローするように言葉を繋いでくださった。怒る人となだめる人の分担がちょっと刑事ドラマ見たい。
白い紙に「上申書」という名の反省文を書き、印鑑の代わりに拇印をポン。シャチハタではダメだそう。
その上でパートナーに身請けに来てもらって終了。
反省してへこんでいることのほかに思うことをいくつか。
警察は紳士的だし、通報も善意に基づくモノだった。まぁ、死なれたと知ったら寝覚めがわるいからかもしれないけれど。
見ないふりをせず通報した人がいたこと。
警察が現場で私を帰さなかったこと。
警察署でも身元の引受人が必要だったこと。
死ぬ気だったら一度は失敗したことになる。
今日の私は自殺を企図していたわけではないから、結果として多くの人の手を煩わせ、警察のリソースを無駄に喰っただけだったのだが。
無関心が人を自殺に追いやるという。
どちらかといえば、ちいさな関係性の寄せ集めが、ギリギリのところで死の淵へ転げないように手を述べてくれるのかも知れない。
関心のかけらが、本当に必要とする人のところへ届くためには何が必要なんだろう。
今日の例で一つあげるなら、通報したら警察がくるまで側にいるべきかもしれない。
短い会話の中で死ぬつもりがさらさら無いと伝わって「あ、早まったかな」と思って帰ってしまったのだろうけれど。
死ぬつもりで芝居を打っていたのだとすれば、パトカーがくる前に逃げ、道路に飛び込むこともできちゃったからね。
自殺らしきサインを察知したらまず通報すること。
小さな関心を向けることしかでず、それに意味があるのかと悩んでいたけれど、きっとそれで助かる人もいるかもしれない。今日の私のように。
先月発表された2011年度の自殺者数も相変わらず3万人越えの30651人に。
3万人と丸められた数字の向こうで、日割りで84人と纏められた数字の向こうで、一人二人と今日も自殺で死んでいく。
なんで私が救われたんだ。
*通報して下さった方、関係各所のみなさま、ご迷惑をおかけしてごめんなさい。
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