
ドラマ『ビブリオ古書堂』で
乱歩の『悪魔人形』が面白かった、
という場面が出てきて、
これは昔、読んだ記憶がなかったので
さっそく図書館から借りてきた。
小6の時に
図書館にあった
このシリーズを全巻読破した。
久しぶりの装丁の感触を味わって
小一時間で読了したが、
さすがに、途中からは
ドタバタ劇で臭いセリフまわしが
鼻についてしまった。
怪人二十面相が
「おっとどっこい」
なんて言うものだから
笑えてしまった。
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人生随談
先生 ハーモナイズという動詞は「調和する」ということでしょ。
奈保子ちゃんもピアノやってるから解ると思うけど、どんな曲でもメロディーラインがあって、これは4部合唱でいえばソプラノですよね。そして、必ず低音部のバスがありますね。極端な話、この2声部だけでもけっこう聴けますよね。
奈保子 はい。バッハには『二声のインベンション』というのがあります。
先生 そうそう。あれなんか、立派な曲集だものね。そして、『三声のインベンション』というのもあるでしょ。次に、アルトかテナーの声部が加わると、より重層的になって厚みが増しますよね。
奈保子 はい。それと、オヴリガートもつけられます。
先生 いわゆるオカズだね(笑)。主旋律の合の手になるような副旋律。
奈保子 素敵な飾りがけっこうありますよね。
先生 あるある。私、オカズ好きですもん(笑)。そうやって、バスの支えや、三度でハモらせたり、オカズを入れてハーモナイズさせると楽曲になっていくわけです。
奈保子 そうですね。わたしは、ハーモニーというと、縦の和音的なことばかり連想していました。横の調和ということも当然あるんですね。
先生 はいな。もちろん、和音というのは、音楽にとって大切な要素ではありますよ。ギターでも、ドミソのCのコードでも、メイジャーかマイナーで全く違うでしょ。それに、セヴンス、ナインス、ディミニッシュ、メイジャーセヴン…やら、いろんな性格のコードがあるものね。
奈保子 それぞれで、聴き手は違った印象を持ちますよね。
先生 そうですよ。それと、和音の進行や展開、繋がりでもドラマ性を感じさせたり、語りかけるような感じになったりしますでしょ。
奈保子 はい。典型的なⅠ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰのカデンツ(終止形)には調和性を感じますものね。
先生 でしょ。そこからはみ出すことで、今度は別な物語が生まれてもくるしね。
奈保子 そうですね。和声学が楽典では基本なのがよく解ります。
先生 それと、調性というのは、音の横と縦の関連で生じるものだからね。
奈保子 モーツァルトはニ長調にいい曲が多いですよね。
先生 うん。明るくて、清澄な感じでしょ。きっと彼が好きだったんじゃないかな。ベートーヴェンの『悲愴ソナタ』はハ短調でしょ。♭3ケの。
あれは独特の悲愴感がありますよね。イ短調とかにはない。
奈保子 久石譲さんの『ナウシカ』のテーマもハ短調じゃないですか?
先生 そうそう。映画の始まりに流れるあの哀愁を帯びたピアノのテーマね。あれはハ短調ですよ。やっぱり、どこか悲愴的ですよね。ちなみにね、
久石さんの『ビアノ・ストーリー』というピアノソロの初アルバムのCDと楽譜をむかし買ったことがあるんだけど、曲集の8割くらいが、ハ短章なんですよ。なんでだろ? と思ったんですが、一つのコンセプトだったみたいね。
奈保子 じゃ、物哀しい曲が多いんですね。
先生 そう。あの『ラピュタ』のテーマ曲もハ短調ですからね。
奈保子 なるほど。たしかに、あれも何処か切ない曲ですよね。
先生 でしょ。やっぱり、久石さんは意図してハ短調を使ってるな、って思いましたもの。
奈保子 きっと、一番お好きな調性なんでしょうね。
先生 だと思いますよ。『久石調』なんだよ、たぶん。