先日、久しぶりに
コンサート発表曲の
レッスンに行ったら、
珍しい器具が置いてあって、
訊ねると「指揉み器」だという。

本体は600円だが、
ジェルが2ケで5.000円もする
というので驚いた。

先生は愛用しているようだが、
なんだか、わざわざ買うまでもない
と思って、写真だけ撮らせてもらった。

何人かの生徒さんも
使っているらしいが、
自分はもっぱら指を指で揉んでいる。

たしかに、ギタリスは指を酷使するので
腱鞘炎になりやすい。

指の障害でギターを断念した
仲間が数人いる。

自分は、40年来ギターを弾いてきたから
そうそうに指が壊れることはなかろうが、
最近では、さすがに猛練習したあとは
キシキシ軋むように痛むことがある。

今日も、午前中に
シルバー大学というお年寄り対象の
合奏コンサートが1時間あり、
『影を慕いて』の独奏も
1曲だけやる。

今日は平日なので、
定年退職組と自由業組の
メンバーだけが参加で、
ファースト・パートは
自分一人になる恐れがあるので、
夕べは真剣に1時間ほど
集中練習した。

ビブラートをかけ過ぎて、
今朝はズキズキと指が痛んでいる。

でも、人に感動を与えるには、
魂を入れて弦で歌わねばならない。



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人生随談

奈保子 音楽理論では、「感動」について考察する学問領域はあるんですか。
先生 ええ。音楽美学というのがありますよ。私も大学時代、音楽科で受講していましたけどね。
奈保子 感動についての分析というのはありましたか。
先生 いや。教科書にも名言していなくて、講義でもなかったけど、ゼミのときに、私はずいぶん発言した記憶があります。音楽科は女の子が多いんですが、彼女たちは、あまり考えたことないみたいでしたね。
奈保子 なぜ、純音楽で感動するんでしょう?
先生 音は単なる空気の物理的振動なのにね。不思議でしょ。音楽はなぜ、人を感動させるか、というのには、まだ定説はないんですよ。
奈保子 エッ? それは意外でした。
先生 奈保子ちゃんも永年ピアノやってきて、考えたことはなかったの?
奈保子 奏法や表現上のレッスンは受けてきましたが、そういうたぐいのことは考えも教わりもしませんでしたね。
先生 私はギター部の定期演奏会や自分のリサイタルで、プログラミングしたりアレンジしたり、アナリーゼしたり、どうやったら聴衆を感動させられるか、っていつもプラクティカルに考えていたんです。
奈保子 そうですか。で、どんな結論になったんでしょう。
先生 4年間の定演とリサイタルのアンケート分析をして解ったのはね、まず、「感心」と「感動」は違うということ。つまり、感動というのは、滅多なことでは与えられない、と思ったんですね。まして、こっちはアマチュアですからね。
奈保子 そうですね。プロでもむずかしいんですから。
先生 そうでしょ。でも、学生の頃は純粋だったから、真剣に考えましたよ。いちおう、300円とか500円というチケットを売ってましたから。タダじゃないんだし。損したと思われたくないでしょ。友達には後で、学内で顔も合わせるわけだし。何とか感心くらいはさせたいよね。
奈保子 そうでしょうね。わかります。