Wiiのすごい発想―任天堂 技術競争を捨てて-新しい市場開拓に成功/溝上 幸伸
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DS、Wiiがどのようなプロセスが生まれてきたか?また、その背景は?という点について、とてもわかりやすく説明されています。ゲーム業界、特にソフト思考の強い任天堂は、当社のようなインターネットメディア企業ともとても類似点があると感じました。


この本の中で気になったポイントは主に2つ。




■ハードとソフト両方を理解することが肝



この資料は、ある戦略会議で使用した資料(戦略の必要性を説明するために作成した資料)。


Wiiが行ったブルー・オーシャン戦略はとても有名な話ですが、市場機会をどう分析し、そして、開発、市場導入に向けて、彼らが行った具体的なプロセスをこの本ではとてもわかりやすく説明されていました。この点だけでも、モノ創りをしている人には、見てもらいたいです。




また、世界規模での技術のコーディネイト能力を持った上で、ソフトの重要性を理解していること。


どれだけ高機能で優秀なハードを開発したとしても、それを十二分に活かすソフトがなければ何の意味もないこと


これは、インターネットメディア企業で働く我々にとっても、とても共感できることです。



どれだけ技術がすぐれ、高機能なプラットフォームを社会に提供したとしても、その具体的な使い道を直感的にユーザーが理解できればければ、それが普及することはありませんし、決して一般化しないでしょう(一部のユーザーに利用してもらえるサービスであれば、こんなことを気にする必要はないかもしれませんが)。


Wiiで言えば、あのコントローラーの機能を直感的に理解してもらうために、Wiiと一緒にWiiスポーツを開発し、市場導入したというのは、さすがです。






■1人の天才と9人の秀才が組織として融合すること

この本の中盤から、任天堂という会社の社風や組織、また、岩田社長の考え方について書かれています。


何が人を驚かせ、おもしろがらせるのかを感じられるのは少数の特別な感性を持つ人だけなので、個の力がとても大きい。その意味では一般の製造業と違う部分があるかもしれない。ただ、プログラムを作って商品化するには、たくさんの人間でトラブルや問題を一つひとつつぶす地味な仕事も重要だ。個と組織の力の両方がなければおもしろいゲームは生まれない。任天堂のよいところは年齢や社歴にとらわれず、優れた個人の才能にすべての社員が敬意を持ち、組織として全力で支援することだ。


岩田社長が朝日新聞で語ったこの部分に、非常に感じるものがあります。


一人の超越した天才が存在することは、組織としてとても嬉しい。ただ、全てにおいて天才に頼ってしまうことで、組織としてはとてもリスクが高く、組織力という面で見ると全く強みが発揮されません。


 ”理想的なのは1人の天才と9人の秀才が組織として融合すること



また、まとめ役である人物には以下の6つのポイントが必要だと。


・大きなビジョンを持っていること

・完成形のイメージを持っていること

・イメージを言葉にして伝えられること

・正しく判断できる知識を持っていること

・公平で温厚であること

・忍耐強いこと






とても気付きの多い本でした。