東京パピヨン -4ページ目

072:リモコン (香山凛志)


 きみはひとり満ち潮を待つ戯れにリモコンで月の色を変えつつ

 

071:鉄 (香山凛志)


 われをなす元素ひしめく心地して地下鉄のなかに空を欲せり

 

070:神 (香山凛志)


 神話では奪われ易き妻ゆえに靄のかたちに髪を巻く朝

 

069:卒業 (香山凛志)


 でも母に卒業はなくおとうとの襟を直して送り出す春

 

068:杉 (香山凛志)


 ゴッホよりすこし寡黙な眼のままで糸杉を描く恋人といる

 

067:夕立 (香山凛志)


 思い出は夕立ちやすく恋人に恋人のいる蝉深き午後

066:切 (香山凛志)


 返り花きみにまつわる一切を活けるはるかな指先の熱

 

065:大阪 (香山凛志)


 ここからが大阪湾と区切られて小雨さびしく打つ和泉灘

064:ピアノ (香山凛志)


 メゾピアノなる身で待とう鈴懸のdiscord赦しながら坂道

 

063:浜 (香山凛志)


 汝がために弾くnocturne目覚めたら城うずたかき砂浜だろう