需要を考える 6 | 芸能の世界とマネジメント

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需要を考えてみるという大きなテーマで論じておりますが、これも立場の問題でありまして、需要はやはり人間の実際の行動から判断するものであり、心については問題にするべきではないとする研究者もいます。なぜなら、心を操ることができればある製品や商品が集中して売れるはずと考えるからであります。前稿の事例研究では元型を突いたマーケティングを論じてみたのですが、元型が作用する商品であれば地球上のすべての人が大好きになって当然であると考えてみた時、私の理論は全て崩れてしまいます。ゆえに、人間の実際の行動から判断すべきであるという反論があるのは事実であります。

 

これについては鋭いご意見でありまして、私自身も元型を100%活用し、例えば、私達のバンドのCDが地球規模での売れ行きを示すことができれば、それは心理学会を根底から覆す大事件となってしまうでしょう。実のところそのような現象が起きないものかと日々の妄想に楽しみを求めているのですが、実際にはそうならないのが心理学的な答えであります。つまり、元型を突いたところで全世界を揺るがすことは不可能であります。

 

なぜそうなるのかですが、重複しますが人間の心は3層構造となっておりまして、中央の層は個人的無意識といいまして、人間の過去の行動の履歴を押し込めている部分であります。その上には意識があり、下には集合的無意識が存在します。集合的無意識が意識にまで到達する過程で個人的無意識を通過せざるをえず、それゆえ、普遍ある無意識に非常に個人的な無意識が結びつき、意識へと到達します。つまり、普遍から個別へと変化した形で意識が反応することになります。例えば、いくらサラダチキンに元型を見出そうとも、鶏肉コンプレックスがあればサラダチキンを手にすることはないでしょう。

 

過去に大きな戦争があった時、ある国を治めていた人物が心理学を使い国民の精神を統一しようと試みたことがあります。当然のごとくその計画は失敗に終わったのですが、なぜ失敗に終わったかというと、人間にはコンプレックスがあったからです。さらに、統一を図るときについて回るのが無意識からの攻撃でありまして、結局は人の心に統一を持たせることは不可能であることの大きな証明となったのであります。

 

これを応用すると、では、70%くらいの人が好み、20%くらいの人が嫌いであり、残りの10%の人がどちらでもない状況の商品を開発すればどうなる?と考えるかもしれません。ところが、このような考え方自体が既に人の心に統一を持たせようとする行動であるので、心理学的にはそのような商品は失敗に終わると予想をします。モノを売ることは難しいですね。売ろとすると売れない理由はここにありまして、人為的な操作は逆に相手の無意識を操作することになり、売れなくなってしまうのです。

 

洋服のショップの店員が過度に寄ってくると「イラッ!」ときて購入にまで至らないことが多々あるかと思いますが、これは店員の売ろうとする心理が顧客の無意識に、つまり、コンプレックスに作用した結果であります。店員と顧客の心の統一を図ろうとした結果としてその逆の現象が起こり、結局のところ売れなくなってしまいます。ですから、本当に売ろうとするのであれば顧客との共通する部分と異なる部分を明確にしたうえで販売を行えばうまくいくであろうと思われ、そのような店員は「個性ある店員」となります。

 

商品も同じことであり、各商品に対する個性を重視したものであれば地球規模には達しないものの、サラダチキンのように多くの人から愛され、しかもロングセラーとなるのではなかろうかと考えております。

 

ご高覧、ありがとうございました。