需要を考える 5 | 芸能の世界とマネジメント

芸能の世界とマネジメント

芸能界、芸能人のために論じます。

前稿においてサラダチキンと元型との関係を述べてみました。これは消費者が無意識にある元型に投影した結果としてロングセラーとなっているのではなかろうかと思うのです。例えば、車をアニマとして投影している男性がいるとします。典型的な団塊世代から団塊ジュニア世代、そうです、私はそのストライクゾーンなのですが、車を女性のように扱うので同時に女性は車が好きであると錯覚を起こしてしまうのです。これを心理学的には「自我肥大」というのですが、自分はこの車が好きだから、自分の彼女はこの車が好きだと勝手に思いこみ、女性に対して車自慢を始めてしまいます。女性からすると「?」となるのは当然のことでありまして、ここにバブル世代の笑い話が起こるわけです。つまり、そのころの男性はカネでアニマを買っていたのです。それが可能となった時代が存在したと考えると、これはこれで実に面白いと思うのであります。

 

さて、サラダチキンの話ですが、ある人はトリックスター、ある人はペルソナへと投影をしているのではなかろうか?なる仮説を出したのですが、皆様方は実際のサラダチキンのユーザーとしてどのようにお考えになりましたか?これもよく考えてみると興味深く、ものすごくリーズナブルな価格で元型を感じることができてしまうと考えてみましょう。トリックスターとはある状況を非常に自然な形で覆す役割を持ちます。チキンでありながら米のような感覚で、すなわち、主食とする人も多いのでありまして、その魅力を楽しんでいると考えられ、これがロングセラーへとつながっていると考えることは可能であると思われます。ペルソナの場合も同じことであります。

 

このように、需要を掘り起こすという作業は人の心に響かなければいけないものだと考えるのが私の立場であります。よく需要を掘り起こすことに統計学的手法が使われることがありますが、統計学で人の心を読むことができればこれほど楽なことはなく、日本の経済の状況はもっとよくなっていると思われます。ところがそうなっていないところを見ると、数で人の行動を全て把握することは現在のところ不可能であることを示しているのではないでしょうか。

 

そこで皆様方、心理学ですよ!!といいたいところですが、心理学はその名の通り人の心を読むことができるのですが、誰しもがマスターできる学問ではないところが非常に残念なのであります。その理由ですが、心理学をマスターするうえで自分のコンプレックスや元型の問題など、ものすごく「マイナス」の部分に触れていかねばならないからです。私自身も心理学の専門家となる過程において何度も体調を崩してひどい時には入院(一日くらいですけど・・・)したこともあり、この時に「病は気から」なる言葉の意味を心底理解できたのでありました。

 

そこをなんとか理解しやすくするために様々な事例をとりいれ、皆様方に提供しているのですが、これでもまだ理解するには難解であるとの指摘をたくさんいただいております。その反省からより簡単に伝えることができる方法はないものかと考えているのですが、実のところそのような方法はありません。深層心理学は無意識を扱う学問ですから、理性として理解することは不可能でありますから、苦しみながら習得するしか方法がないのです。但し、私が行っているバンド活動を見ていただくとたくさんのヒントがあるはずです。

 

私のバンドでのライブはMCが90%、残りの10%が演奏です。持ち時間が1時間あるとすると演奏は4分の曲が1曲入る程度です。ですから実際にはMCが90%以上となります。このようなライブを見たいという人がいるわけで、つまり需要があり、これは心理学的に何が影響しているかというと、トリックスター元型となります。そこに老賢者元型を混ぜ込み、最後の曲で「自己元型」へとつなげます。このようにすれば需要を担保することは可能でありますが、それだけの修業が必要となり、これが難しいところでありますが、逆にこのことが差別化戦略となっていることが皮肉なところであります。

 

次回は需要におけるコンプレックスと元型との作用を考えていこうと思います。ご高覧、ありがとうございました。