需要を考える 序論2 | 芸能の世界とマネジメント

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前稿においては音楽の需要なるものの定義を行うための準備を行いました。しばらくこの作業が続きます。よろしくお付き合いください。

 

マーケットにおいては常に供給があれば需要があり、経済学においては需要が供給をよぶという近代経済学、とりわけケインズ経済学においては定説となりました。しかし、コンビニが日本で非常に大きな成果をあげると、次に「供給が需要をよぶ」という理論が現れ、ケインズ経済学を否定するまではいかないものの、一部改良がおこなわれたのが私が学部で経済学を学んでいた頃でした。ですから、今から約25年前に日本の経済学は大きな転換点を迎え、その転換点において私は経済学を学んでいたのでした。

 

供給が需要をよぶなる経済構造はIS-LMモデルでは数学的に計算できず、つまり、公式を作ることが不可能であるため数字で実証することが不可能であるため、今日でもこの経済構造を支持する経済学者は多いものの、立証が不可能であるために話を進めにくいのが現状であり、現在における経済学者が非常にもがき苦しんでいる問題であります。そして、その迷える経済学者を多くつくるきっかけとなったのがシュンペーターのイノベーション理論であり、彼は非常に優秀な計量経済学者であったにもかかわらず、その肩書を自ら捨てさり、数学的実証が不可能であるものは不可能であり、よって第三の道へ進むべきであるとし、そこから導き出されたのが「新結合」なる理論、現在における「イノベーション理論」となったのであります。ではなぜ供給が需要をよぶ理論は数学的な立証が不可能であるかですが、それは需要を先取りすることは数学では不可能であるからです。つまり、人の心の問題に接近するものであり、ましてや無意識を数値化するなど不可能であるため、そもそも需要を先取りして供給を需要よりも先行させるなど数学的には「実証不可能」という「数値」が出てきてしまうからであります。

 

さて、ここまでは経済学の専門家が読む文章でありまして、一般の方々には心の底から納得するにはあまりにも抽象的すぎると思いますから、簡単な例を用いて個別具体性を持たせてみようと思います。まず、需要が供給を生むという伝統的な考え方をご紹介しましょう。

 

需要なるものはモノを購入しようとする側のことを意味します。換言すると消費者のことです。供給とはモノを消費者に手渡す側のことを意味します。これを経営学では企業といいます。法律上の会社とは考え方が非常に異なりますからご注意ください。

 

需要が供給が生むわけですから、企業は消費者のニーズを探る行動を行います。ヒトは何が欲しいのか・・・・このように考えるのは現在を生きる人々でありまして、需要が供給を生むわけですから需要なるものは既に供給側に見える状態にあるわけです。例えば、終戦直後から高度成長期の日本を考えてみましょう。終戦直後ですから日本全体のマーケットとは「生活物資」が必要となることが目に見えております。まずは当時の日本人にとって「米」に対する需要が非常に大きいものであることは考えるまでもありません。需要がわかっているわけですから米をマーケットに流通させると売れるのは当然のことです。そして、売れた分だけ日本経済は上昇します。

 

これは極端な例ですから話を高度経済成長期にもっていきますと、高度成長期を日本はどのように表現したかというと、「もはや戦後ではない」と定義しました。これが1956年の経済白書に明記されました。この頃になれば米に需要があることは変わりありませんが、流通としては少し落ち着いた状態になったとはいえ、米に大きな需要があることはわかっていることなので米を多く流通させることは経済を発展させる一つの材料であるものの、米の需要だけでは日本経済を支えるには難しい状況になるのもこの時期の特徴であります。ましては人口の増加がありましたから、人口が増えた分の経済成長がなければ地盤沈下となります。では、何を売ろうか・・・と企業は考えます。

 

経済成長が著しい・・・要は日本国民全体が過労になっている・・・そうなると甘いものを売れば売れるはずだ!戦時中に米兵からもらったガムやチョコレートがどれほどうまかったか!日本酒も甘口にして売ろう!「甘い」がテーマだ!!

 

需要が供給をよぶ経済構造とはこのような状況のことをいいます。特徴的なのは需要が目に見えている状況でありまして、人の心の中を覗いて需要を掘り起こすわけではありません。「マーケットが望んでいるから企業としてその望みをかなえることが使命である」となるのが需要が供給をよぶ経済構造でありまして、逆に需要が目に見えているのに辛口の日本酒をマーケットに送り込んでも売れないのが需要が供給を呼ぶ経済構造であります。需要がわかりきっているので数字で需要をとらえることが可能であり、ゆえに、数学的に経済をとらえることが可能であるのも大きな特徴であります。甘口の日本酒の需要が5であれば企業として5を供給すれば事足ります。日本国民が今以上に働き、その結果として過労の人が増えている状況では、甘口の日本酒の売り上げがさらに伸びることは目に見えているので、翌年は7を供給すると、日本酒のマーケットは2上昇します。なんと素晴らしい経済構造でありましょうか!

 

このように、需要が供給をよぶ経済構造においては経済を数学的に表現できるため計画的に運営することが可能となり、よって金融政策も打ち出しやすく、金利のことで国民ともめることは今ほどではないわけです。企業への融資の問題にしても、マーケットが見えていますから、マーケットに沿った事業計画書を提出していれば融資は可能となり、融資する側も回収できる確率の方が高いわけですから金利で儲けることは容易であり、売って儲かり、貸してさらに儲けることができる。よって経済は大きく成長するという結論となったのであります。もちろん、その当時の話であります。

 

今回はここで筆を置きます。ご高覧、ありがとうございました。