売ることを考える 16 | 芸能の世界とマネジメント

芸能の世界とマネジメント

芸能界、芸能人のために論じます。

前回より芸能界の仕組みについて論じておりますが、芸能界というのは現実にはカネの世界でありまして、実力がなくともカネがあればだれでも有名になることは可能です、しかし、そのカネをどこから工面するかが大きな問題となります。世の中のほとんどの人はイニシャルコストとしての5千万円を若いうちに手にすることは不可能です。こうなれば最初から5千万円を持っている人に芸能人として活動してもらうのが一番早いのですが、しかしその人が人前に出ることが苦手である場合、これはまた非常に困ったことになります。つまり、芸能界は常にカネと人とのミスマッチが生じており、慢性的な人手不足である業界であります。ですから、イニシャルコストさえ用意できればあとは非常に楽に芸能人になれます。なぜなら、常に枠は空いているからです。

 

こう考えてみますと芸能界というのは夢を追う業種なのかカネを追う業種なのかよくわからなくなってきます。正直なところ私もそのあたりのことはよく理解できなくなってきております。芸能界を目指している当初はやはり夢を追うものでありましたが、そのような夢はすぐに打ち砕かれ、やはりカネの世界かな?と思ったりしたものです。しかしここで重要なのは、前述の芸能界の現状を考慮すると、夢とカネの両方が必要であると考えることができます。つまり、夢だけ追っていては夢で終わってしまい、カネだけを追っていれば夢がなくなり、集客ができなくなり、カネが逃げていくわけです。ゆえに両方が必要となってくると私は考えております。

 

基本的に芸能界は東京を中央としての芸能界とそれ以外のローカルな芸能界が存在しております。現在のところ日本全国で有名な芸能人になろうと思えば東京に出ていくほかありません。しかし、大阪府と大阪市(以下、大阪地域)は芸能界の中央的な役割を担っていこうとしております。これは非常に面白い試みである反面、これまでの大阪地域の人々の考えとして、全国でやりたいのであれば大阪地域以外の地域に行ってやってくださいというのが基本的な姿勢でありました。ニューイシューというバンドも同じことで、女性のドラム&ボーカルでハードロックをやるような奇抜なバンドは大阪から出ていけ!!と面と向かって罵声を浴びせられましたので、東京へ行ったところ非常に好評でありまして、このまま芸能界入りとなりました。ところが私たちに罵声を浴びせた大阪地域が何を思ったのか、今度は逆輸入しようとする動きとなったわけです。これは私としてはうれしい反面、クリステンセンのイノベーションのジレンマ論からすると、大阪発で全国展開するミュージシャンを育て上げるというのは非常に困難であること感じており、一般的な言葉で表現すると、「二番煎じ」である状態の大阪地域が東京の音楽業界を越えていくことは困難を極めます。

 

まず、5千万円は必要とされるイニシャルコストを大阪で用意できるかという問題です。ここは非常に重要な問題です。早い話が、このイニシャルコストを大阪で用意できるような状態であれば、今頃になってあえて二番煎じの戦略を実行する必要はなく、既に東京を抜いているかもしれません。このイニシャルコストを大阪で用意することができないために、夢が夢で終わっていく現状をまずは直視していただきたいです。大阪地域の誰が各種ミュージシャンのためにこのイニシャルコストを出資してくれるのでしょうか?

 

次に、夢を追う側、つまり、演者サイドにも問題がないわけではありません。正直なところ、大阪地域で活動するミュージシャンの方々はマーケティングなるものを意識しているでしょうか?という問題です。私は全国の様々な地域にて「生活」してきた経験から申し上げますと、大阪地域の方々は非常に頭の回転が速く、物事の道理をわきまえた人で構成されている、素晴らしい人々が圧倒的多数であると感じております。しかしながら、それが逆に災いし、大阪地域の枠内にこもってしまう傾向にあります。

 

道理をわきまえ、非常に頭で考え、意識的に操作された音楽・・・

 

それならクラシック音楽を聴いていればよい話で、何もロックなどを含むポピュラー音楽を行う必要はないわけです。カバーを行うにも完コピを要求してくることが多いのも大阪地域の特徴であります。これゆえに、私のバンドではパールジャムのカバーをドラム&ボーカルで行っておりましたが、それは完コピではないというレッテルを貼られ、東京へと追いやられたわけです。

 

技術の大阪地域・・・

 

キャッチコピーとしては素晴らしいかと思いますが、逆にこれが日本全体のポピュラー音楽のマーケティングを無視する格好となり、大阪発はより厳しくなるものと私は考えております。

 

いろいろと述べましたが、クラシック音楽であれポピュラー音楽であれ、活動を行うにはカネが必要です。しかしながら、カネだけではどうにもならず、やはり夢も必要であります。この両方がかみ合ったときに一流のミュージシャンが誕生します。このように考えますと、演者、そしてそれを支援する人々の基本的な考え方を全国レベルにまで変えていかねばなりません。技術は素晴らしいものがあるわけですから、あとはマーケティングをしっかりと理解していただき、全国標準なるものと関西独自の技術をミックスさせ、後発であることの弱点を克服していただきたいものです。

 

9月から私のバンドは大阪にて先陣を切って本格的に活動をいたします。その時の皆様方からの視線を感じつつ、今後の大阪地域の音楽業界についてもっと深く考えていこうと思いますので、温かいご支援のほど、よろしくお願いします。

 

ご高覧、ありがとうございました。