前稿では経営資源が不足している状況かつ、人気もない状況の中でどのようにして芸能人として売っていくかを問題提起して終えました。お金があればテレビの番組枠を買い取って自作の番組を作り、そこに主演や司会などで出演すれば有名人の誕生となりますが、そう簡単に話が進まないのが芸能界でりまして、この最初のヒットをいかにつかむかに大きなエネルギーが必要となります。アイドルを含め芸能人が全国で活躍できるパイが狭いだけに余計に難しいのが現状です。但し、夢に向かうだけではなく、この厳しい状況を正しく理解すれば解決策も見出していけるかもしれません。そのヒントをこのシリーズでつかんでいただければと思います。
まず、実際に企業や組織同士の競争に勝っていくというのは相当大変なことです。ましてや全国で有名になろうとすると、当然、全国の企業や組織を相手にしないといけません。芸能界ではどうなるかというと、まず、地方の話からしますと、地方には地方の芸能界がありまして、例えば、大阪には大阪の芸能界があり、さらに大阪の北部地域の芸能界、南部地域の芸能界というように、地区ごとに営業エリアが暗黙の了解として定められておりまして、その範囲を超えての芸能活動というのは許されないのが現状です。これは大阪に限った話ではなく、47都道府県の全ての地域の芸能界がこのシステムです。このような現状のなかで全国に挑むというのは相当な覚悟がいるということは容易に想像がつくかと思います。今ではネット配信で簡単に全国へ情報発信できますが、「競争」という観点からすると、弱者はやはり弱い立場にあり、全国への切符を手にするのは至難であります。ではどうすればよいのか?ということになります。ここで一つ、「頭を使う」という戦術を使わなくてはなりません。これは自分のために使うわけではありません。芸能界のために頭を使うという思考が必要となります。
お金がない場合、そもそも芸能界では活動できません。しかしながら、最初は皆お金はありません。どうするかというと、お金を作るところから始めることになります。ではそのお金はどこに存在するかというと、銀行や投資家ということになりますが、この二つは簡単にお金は貸してくれません。では次に、家族や友人知人となりますが、家族や友人知人からの資金援助には限度があり、またすぐに底をつきます。最初の呼び水にはいいかもしれませんが、大きく全国で活躍していこうとするには他の手段と併用しなければなりません。では、最終的にどうすればよいのかですが、それは、全国展開している芸能事務所、ないし、全国の芸能に興味のある組合などに頼ることになります。これが最初の一歩ですが、芸能事務所に入ったけど、結局はデビューできないことが実のところ多いです。これはなぜかというと、芸能人として差別化できていないからであり、芸能事務所としても売り込みにくいという現実もまた存在します。ゆえに、前述のように、「芸能界のために頭を使う」という思考になるわけです。これは窮極的には「自分の仕事は自分でとってくる」というくらいの覚悟でなければなりません。芸能事務所に所属したからといって何もしないでいると結局のところ、全て自分に跳ね返ってきます。また、マネージャーというのはあくまでも代理人であって、芸能人ではありません。ですから、人脈は作りますが、最終的に芸能人として自分自身が頑張らないと売れることはありません。この点を理解するところから始めていただきたいです。
ここで新たな問題がでますね。人前に出るだけでも大変なのに、その上まだ経営の勉強をしなければならないのか?ということです。答えは「Yes」です。ここが芸能界の大変なところです。今から30年前まではこんなこともなかったのですが、やはり業界として成熟してくると生き残っていくのが難しくなってきます。これは「ブルーオーシャン戦略」などでいわれておりますが、成熟した市場(レッドオーシャン)において戦いを挑むにはそれなりの知識と努力が必要となってきます。芸能界においてはこのことがあまり認知されておらず、よって、情報もあまり出ないがゆえに気軽に足を踏み入れ、夢だけを追い続け、結果として失敗するというのがパターンとなっております。私が主張したいのは、レッドオーシャンの中にもブルーオーシャンが存在しますから、それを探して市場の拡大をしていくことです。ブルーオーシャンが拡大し、レッドオーシャンになろうとする頃、芸能事務所も大きく儲けていると思います。そうすると該当する芸能人にも大金が入ってきます。そのお金をさらに芸能界に投入して自分の顔を売っていく・・・これが理想であります。
ではこれを具体的にどのような方法で行っていけばよいのかについて次回から吟味していこうと思います。ご高覧、ありがとうございました。