心の磁力の活用(具体策 11 中間の意味) | 芸能の世界とマネジメント

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芸能界、芸能人のために論じます。

芸能人として大成することを目指すことは非常にいいことだと思います。それが税金となり還元され、日本自体も豊かになり、国民の生活もよりよくなることだとイメージできます。ところが、大成や成功というものはごく限られた人にしか与えられない機会であり、この点が難しいところですが、かといって全員が成功者となる社会とはどのようなもかと考えるときに、では、そのような状況の中でビジネスの世界において成功という言葉は存在できるのか?などと考えるとき、勝ちと負けとに分けて考えることに無理があるような気がしまして、そこが現在の日本の思想的な問題となるかと思います。というのも、深層心理学的、とりわけ心の問題としてユング派では、基本的に「分ける」ことをしないところに特徴がありまして、ここが他の心理学とは大きく異なる点であります。しかしながら、経営学的に深層心理学を考えると、あるものを「AとB」に分かれているところが実に見事でありまして、ここに差別化の本質があるのではないかということで研究を進めているところです。

要は因果律のとらえ方の問題であると、今のところはそのような仮説で進めているのですが、やはり車の事例を見ますと、同じ車でありながらメーカーによりあまりにも違いがありまして、異なる部分を強調しながらも車としての個性をいかんなく発揮しているのが非常に素晴らしいと思うところであります。法律によりメーカーが乱立できないようになっており、その意味で保護産業であるからやっていけるという意見もあるかもしれませんが、経営戦略論を考えるには上述のことから非常によい、生きた事例を与えてくれるものであり、それをアイドルにも活かせないかというのが狙いであります。

アイドルの世界は車の世界とは逆に参入することは自由です。ですからお金の流れも分散します。しかしながら、ファンの層を拡大すればそれは克服できると思いますし、そこに個性というものがやはり必要になるかと思います。個性とは何かとは私の運営するブログにてすでに何度かお伝えしておりますが、要するに関連するものや人に挟まれている行動の主体のことをいいます。これは象徴とは違いまして、象徴とは挟まれている状況のことを指します。このような立場に立つと人は自分の意思を持ちながらも、「生かされている」という考え方を基本としながら、前に進むことになります。経営戦略論的にはポーターの「ファイブフォース分析」の図に顕著に表れているように、あくまでも中心は行動の主体で、その周りに敵がいるような構図で図示されております。しかしながら、これもよく考えてみると、競争相手がいるからそのような図になるわけで、商売敵がいない状況では孤立してしまい、逆に失敗する恐れがあることを示しております。その昔に私はラジオ番組を作っておりましたが、やり始めた当初は競争相手がいないことが勝利につながると信じておりましたから、競争の発生しない企画を売り込んでいたのですが、ことごとく失敗しておりました。その理由は簡単です。「他社と比較できない」からです。他社と比較できない場合、顧客にとっては判断基準がなくなるわけですから商談がうまくいくわけがありません。そこに気づき、次は他社と共存する道を選び、比較検討しやすくした結果、仕事は面白いほどにとれるようになり、その段階で初めてファイブフォース分析の真意を理解できたのでした。

ここでひとつ、今でも「共存」の道を選んだことについて、あの当時より心理学を学んでいてよかったと思うのは、いわゆる「競争」という考え方で、競合他社に勝利することだけを考えて営業していたら、おそらく今現在の私は存在しておらず、逆に負け犬となっていたかもしれません。というのも、どこかに勝つということは企業間でのつながりを断つことになり、「あいだ」の存在ではなくなるからです。あいだの存在ではなくなるということはつまり、「孤立」を意味し、結局は失敗の道をたどることになるかと思います。このように考えてみると個性化の過程、つまり自己実現というものは人との摩擦から生まれてくるものであり、それから逃れることはできないということです。摩擦から逃れ楽を選んだ瞬間から失敗の方向へ進んでいきます。成功している企業の経営者がよく口にする言葉で、「金のことは考えるな」というのがあります。儲けてる人が金のことを考えていないのは基本的に矛盾する発言でありますが、しかし、上述の摩擦論からすると、お金は人ではありませんからお金と摩擦を起こすことはできません。摩擦のないところに事は発生しないので、失敗も成功もない無の世界となり、ビジネスの結果としては失敗の方向へ向かうと考えてみれば実に見事な発想であることが理解できます。

このように書いている私は皆様方からすれば「摩擦」を感じることはできないかもしれませんが、ある組織に属している限り決してそのようなことはなく、常に強い摩擦の中で生活をしております。アイドルの皆様方にお伝えしたいのは、競争や摩擦を避けるのではなく、「個性を磨くため」の競争や摩擦を自ら仕掛けていくくらいの元気さがなければいけないと思います。これは運営をするプロダクションが一番の責任を負うことになるのですが、踊りの元気さや発言の元気さだけを求めるのではなく、競争相手との共存を目指した競争、すなわち、差別化戦略を展開していけるように企画を展開することにより、より一層の成長と発展を見込めるものと思われます。難しいかもしれませんが、参考にしていただければ幸いです。

ご高覧、ありがとうございました。