余談の時間(心と経営学) | 芸能の世界とマネジメント

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私が運営している基礎分野のブログの「実学道」の進捗が遅いこともあり、今回は余談として話を展開しようと思います。そこで問題となるのが経営学では心の問題は扱わないのか?ということですけど、人間の心そのものをとらえる試みは学会単位で行われておらず、学者単位で学会とは関係のないフィールドで展開されることがほとんどです。とはいえ、組織論ではリーダシップ論、組織行動論、暗黙知や形式知などのナレッジマネジメントにて多少は心のことを語られることがあります。また、近年ではマズローの心理学を経営学に活かした研究を行う国内の研究者もいるのは確かであります。しかしながら、例えば、暗黙知の存在に対する認知にまで踏み込んだとしても、暗黙知とは何かとの回答に至るまでにはいかず、動機つけ論に関してもそうですが、結果を重視するあまりに、わからないことは切り捨て、それ故に非常に抽象的な議論の展開となっているのが残念でなりません。

例えば、LinQというアイドルグループに新人のアイドルが加入しました。先輩のアイドルが新人アイドルに様々なことを教え、教育を行っていくのですが、その時に「心の磁力」についてをいかにして相手に伝えるかについての具体的な方法論にまで踏み込むことはなく、それは暗黙知の問題として取り扱われ、暗黙知と形式知とのサイクルにより、指導者の暗黙知が指導される側の暗黙知へとなっていくと一般的にはされていますが、果たしてその知識なるものはどこの領域に格納されるのかについての疑問や、そのようなサイクル、具体的には4段階を経ないと相手に伝わらないものか?などと思ったりするものですし、経営の現場の人からすれば、「そんなことわかっとるわ!!、具体的な方法を言ってみろ!!」と声を荒げたくなるでしょう。

例えば、あるアイドルを見た瞬時にそのアイドルのファンになり、踊りも瞬時に踊れることがあります。そのファンは踊りの知識や経験は全くなくともそのような現象が起こることはアイドルの現場では多々あります。本来はアイドルの暗黙知として4段階を経て継承される暗黙知は、ものの1~2秒くらいのことでファンに移転されることがあり、こうなるともはや経営学では説明がつかないのですが、この部分をわからないまま切り捨てるのが経営学の特徴でもありまして、しかし、瞬時にして暗黙知が伝えられる現実があるのならば、それを概念化して世に広めようと考えるのが私のやり方であることをご理解いただければ幸いです。

ちなみに、前述の例により暗黙知というものを深層心理学的にとらえるとどのような解釈となるかですが、要するにコンプレックスのことでありまして、個人的無意識の領域によるものであります。例えば、私が元宝塚歌劇団の女優さんからダンスを教わった経験では、その人から教えられた瞬間から踊れるようになるのがとても不思議でありました。そしてその女優さんの説明がまた面白く、本来備わっている身体機能を引き出したに過ぎないと教えられ、端的にいうと、その女優さんは私に教えたのではなく、気づかせたに過ぎないと言っておられました。これは冷静に考えると、いまでもそうですが、幼稚園や小学校のカリキュラムにてダンスをさせられていたのを思い出しました。しかしながら、ダンス事態に興味のない私は「やらされている感」で満ちておりましたので、ダンス音楽を聴くのも嫌でしたし、その影響で中学校に入学するまでは音楽の「授業」がものすごく嫌でしたし、踊ることも、また、踊りを見ること、さらにはそれを指導する先生にも嫌悪感を感じており、もとともとあった教師への不信感から、その意味で「教師コンプレックス」を持った子供であったことがダンスをより一層、嫌いにさせていたと回顧しているのですが、子供の頃に嫌でも体得していた「ダンス」は個人的無意識内にしっかりと格納されており、その宝塚の先生は私に良い意味での「退行現象」を発生させてくれ、それがコンプレックスの解消、すなわち、暗黙知の「獲得」へとつながったということができるでしょう。

このような因果律のとりかたの方が説得力があると思うのですが、いかがでしょうか。そして、暗黙知の移転に関しては移転というよりも、暗黙知への「気づき」を「誘導させる」方がより有効だと思われるのが前述の実際例であります。ただし、ナレッジマネジメントの概念が間違っているのではなく、因果律のとりかたに違いがあるため、違いがあるように感じられますが、目指すべき方向性、すなわち、「伝える」というゴールに関しては同じでありますから、世の中には様々な考え方が存在するとご理解いただければ幸いです。また、テレビではなく、生のステージで生の聴衆者を思うままに動かしたいと考えている演者の方は、聴衆者にもともと備わっている身体機能や知識を一気に起動させる要因を体得しておくと、ステージは確実に盛り上がります。それができるようになるには相当な時間を要するかと思いますが、知っておくと便利かと思います。

余談としては長文にお付き合いいただき、深謝いたします。ご高覧、ありがとうございました。