村上龍の著書、『五分後の世界』を読んでみました。
私はゲーム版で知りましたが、原作は今まで呼んだことがありませんでした。
主人公の小田桐は、五分のずれで現れたもう一つの日本に迷い込んでしまいます。
もう一つの日本は、第2次大戦後も民族の誇りを失うことなく戦い続けていたのでした..。
原作を読んでわかったのですが、ゲームで出てきた歴史教科書はほぼ原作の写しだったのですね。原作のほうが、より詳細な表現がされていますが。
例えば、第2次大戦後、日本の四国は中華民国が統治することになりますが、国民党と共産党の内戦に四国も巻き込まれる話はゲーム版には出てきません。
おそらく、ゲームでは政治的な意味合いで出せなかったのだと推察しますが、それにしても原作のは生々しい。
【五分後の世界、歴史教科書】
http://ameblo.jp/link-shinxp/entry-12012508330.html
物語の途中で、地下に建国された日本国、アンダーグラウンドのマツザワ中尉という人物が登場します。
小田桐はマツザワ中尉から、五分後の日本が『降伏した場合』のシミュレーション(史実の日本)詳細を聞くのですが、これがまた耳が痛い。
『沖縄を犠牲にして無条件降伏した場合は、最終的にアメリカの価値観の奴隷状態になるという予測が出ました。経済的な発展のレベルは何段階かありますが、結果は基本的には同じことで、つまりアメリカ人が持つある理想的な生活の様式を取り入れて、そのこと自体を異常だと気づけないということ、文化的な危機感は限りなくゼロに近づいていくので、例えば、日本人だけが持つ精神性の良い部分を、アメリカが理解せざるをえないような形にして発信すると言う可能性はなくなります。
そうですね、アメリカでとても持てはやされている生活のスタイルが、そのまま日本でも持てはやされる。それに近い状況になるということでしたね。
政治的にはアメリカの顔色をうかがって、アメリカの望むような政策をとるしかなくなる。
外交面では特にその傾向が強くて、日本の政治力、外交的影響力は、国際的にゼロかもしくはマイナスになります。
マイナスという意味は、日本の外交能力のなさ、外交政策決定力のなさが国際的なトラブルの原因にもなることもあり得るということです。
具体的に言うと、
アメリカ人が着ている服を着たがる。
アメリカ人の好きな音楽を聞きたがる。
アメリカ人が見る映画を見たがる。
アメリカ人が好きなスポーツをしたがる。
極端に言えば、ラジオからは英語が流れて、街の看板もアルファベットばかりになり、人々は金色や赤に髪を染めて、意味もわからないのにアメリカの歌に合わせて踊る、というところでしょうか。
そしてそれが異常なことだと気付くことができないくらいの奴隷状態に陥る。
それにしても貴方を見ていると、やはりシミュレーションに過ぎないということがよくわかります。貴方は髪を金色に染めたりしていません。』
マツザワ中尉は、所詮シミュレーションだ話しますが、小田桐は内心で(全部、あんたの言ったとおりになっちまうんだよ)と。
何より、年間の自殺者が3万人を越え、メディアの情報に容易く踊らされた結果、民主党政権のごとき無能政権が出来上がる。
さらに言えば、現実を見据えない誤った平和主義。
これは、かつての先人の教訓から何一つ学べていない証左であると私は思います。