こんなタイトルだと、小学生くらいの子供と、たくましいお父さんを思い浮かべるかもしれませんね
これは、私の父、90歳の父の話です。
(今日は銀粘土とは関係のない内容です)
父は日本の高度成長期を支えた典型的な「仕事一途」な銀行員でした。夜は遅くまで仕事や接待で、土日は接待ゴルフか疲れて寝ているか。家事や育児は100%母の仕事で、それはそういうもの、という時代のそういう家庭でした。
そんな父にも趣味はあって。あまり今の若者には(そして実は私にも)馴染みのない「長唄」というものです。
三味線などの和楽器の演奏で、正座をして独特な節回しで唄う長唄を、父は大学時代に始めました。
まだテレビのない時代に、ラジオにも出ていた三味線奏者だった祖母の影響が大きかったのだと思います。
趣味、とはいっても働き盛りの頃は趣味の時間はゼロだったので、長いこと唄っていなかったのだと思います。
定年近くなり、時間に余裕ができるようになってから、たまにお稽古に通うようになり、そして定年退職をしてからは、定期的に通っては、年に1回くらい、発表会に出ていました。
私も何年かに一度はその発表会を聞きに行ったのですが、耳慣れない長唄は何が上手で何が下手なのかはわかりません
でも両親曰く、
「先生に仕事を辞めて跡を継いでほしい、とまで言われたことがあるんだよ~」
「そうよ。パパの長唄は本当に素敵なのよ」
とのこと
そんな父も今は90歳。
そして昨日は長唄の発表会でした。ここ数年発表会には行っていなかったので、久しぶりに聞きに行ってみようかな~と軽い気持ちで見に行ったのですが…
正直言ってビックリ
舞台の上で4人の三味線奏者と4人の唄い手(正式な言い方わからず)で構成されているのですが、その唄うたいの主役的な役割をしていた父の声が、5年前よりも進化していたのです。張りがあって、声も大きくちゃんとお腹から出ている深い声になっているのが聞いていてハッキリわかる。
正座をして唄う父の背中はシャンとしていました。
父は舞台の上でもっと大きな声が出せるようになりたい、とここ数年ボイストレーニングに通っていました。
「へ~、いいじゃない」
くらいに聞いていましたが、、、う~ん、なんだろう、確かな意思を持って達成したいことがあって、それに向かって努力してきていて、そして90歳でその結果を出している。
誰に見せたいとか、誰に認められたいとかでもなくて、自分がそうなりたいと思って、ちゃんとそこに向かって進化したのだと。
そんなことを、父の長唄を聞きながら感じたら、あ~、凄い人生の先輩がこんなに身近にいたんだなと、眩しく思えました。
考えてみたら、90歳で、着物をキャリーカートに入れて自分で電車で会場へ行って舞台に出るだけでも凄いことです。
今までの発表会の中で、一番客席に大きく届いた父の唄を聞いていたら、なんだかジ~ンとこみあげてくるものがありました。
パパ、カッコいいよ。
パパ、カッコいい!
私も、私の舞台で頑張ろう。まだもっと頑張れることがたくさんあるハズ。
そんな風に思いながら帰ってきました。
あ、舞台って比喩ですよ。私が歌うのはカラオケくらいですから
(輪花梨はシルバーアクセサリー工房、そこが私の舞台です♪)