まだまだ、輪花梨inNYです。

前回のブログで書いた、彫金のパーツ屋さんメタリフェロス。
英語だとMetalliferousと書きます。

そこのオーナーのピーターさんのことを書きます。

彼は頑固で偏屈な空気を漂わせていて
決してニコニコ「いらっしゃいませ」なタイプではなく
でも、こだわりを持って仕入れをしていて
お店にも品揃えにも、プライドを持っている人でした。
天然パーマの髪の毛には、年の割には多い白髪があって
洋服は全部で5枚くらい?‥と思うほど
夏でも冬でも同じ、Tシャツとトレーナーとコットンパンツ。

とても澄んだブルーグレーの瞳を持っていて
子供みたいな笑顔も、たまぁに、偏屈の合間に見せたりします。

私はそのお店に8年弱、通っていました。
彫金のパーツを買うために。
買うものがなくても、なんとなく、何かあるかな‥と。

最初は話しにくそうだと思っていたピーターと
何をきっかけに最初に話したのかは覚えていません。
おそらく他のオネエサンのニコニコ店員がいなくて
仕方なく、質問をしたのだと思います。
でも、その時に、何か通じるものを感じたのだと思います。

いつからか、お店に行くと、必ず1回はピーターと
会話をするようになりました。
それは、必ずお店のことで。
「あの新しい棚、見たか?」
「この工具はなかなか使いやすいぞ」
‥とそんな内容です。私は
「うん。いいんじゃない?」とか
「え~?私は使わないと思うな」とか
そんな程度の、本当に他愛もない内容でした。

たまに買い付けに出てピーターが
いない時もありました。
そういう時は必ずメモを残しました。
「お店に来ました。紙やすりを買いました」
‥とそれだけ。
すると後で電話がかかり
「お店はいい感じだったか?」
「うん。いいんじゃない?」
とだけ話して、会話終了。

不思議なくらい、短い会話。
でも、必ずある会話。

それが5年ほど続いたある日

しばらく、お店へ行けていなかった私が
お店への階段を上っていると、踊り場に張り紙が
ありました。

「ピーターの突然の死を、従業員も仲間も、
みんな大変残念に思っています」


まだ、40代でした。
心臓発作だったそうです。

それは、びっくりするくらい私にとってショックな出来後で
だって、来月にはもっと私を驚かすような工具を入荷するぞって
そう言っていたのに。
どうせ、大した工具じゃないてしょって
言いながら期待してたのに。

いや、工具じゃなくて。
あの、どうでもいい、会話が、
あの空間から、抜けてしまったのが
ただただ、ショックでした。

でも、またこうやってNYに年に2回くらい
仕事で来ると、必ず時間を作って
「何があるかなぁ」と、お店に寄ります。

お店、いい感じなんじゃない?

‥と、あの頃より少し髪の薄くなった店員さんや
ちょっと猫背になった店員さんを
あの頃と変わらない活気の中で、
嬉しい気持ちでピーターに伝えます。

できれば、もう1回、会話をしたいけど。