前回のつづきです。

カナダの公立中学校で、ムーン先生の彫金の授業を受けて、ヘンテコウルトラマンの指輪をつくったことは、前回お話をしましたね。
彫金だけでなく、ムーン先生の授業は七宝も体験させてくれました。

「好きな色で、好きな模様を描くのよ」

七宝も彫金と同じ。自由な発想を重んじるクラス。でも、自由はとても難しいのです。
自分の中にハッキリとしたコンセプトやイメージがないと、模様が描けない。
あらためて好きな色と言われると、色とりどりの綺麗なガラスの粉から、どれを選んで、どれと組み合わせればいいのかすらわからない。

「どの色がキレイですか?」
「あなたがキレイだと感じる色が、キレイなのよ」
「この色はどの色と合いますか?」
「あなたが合わせたいと思う色なら、どれと組み合わせてもいいのよ」

It's up to you =あなたが決めるのよ

この言葉を授業中に何度言われたことでしょう。
クラスのカナダ人は、みんな楽しそうに手を動かしています。
ギョッとするような色の組み合わせでも、大胆に模様を描きます。

私はと言えば、中学生にして既に「産みの苦しみ」を体験していました。
いくら手先が器用でも、アイディアがないと何もつくれないことを知りました。

悩んで、悩んで。結局私は、クリーム色のガラスの粉で、アヤメの花のような絵を描きました。
背景は紺色一色。みんなが10色くらい使って楽しく模様を描く中、私ひとりが、クリーム色の花、緑の茎、紺色の背景の3色で七宝を仕上げました。私がその一つの作品を仕上げるまでに、周りのクラスメイトはみんな5~6個の作品を作っていました。

みんな机の上に自分の作品を並べます。
「これ、ちょっと模様がクレイジーだろ?」
「その色使い、キレイね~!」
みんながワイワイ盛り上がる中、私はぽつんと、その地味な紺色とクリーム色の七宝を1つ、机の上に置いていました。地味で、発想が貧困で、1個で、英語も下手くそで、もうコンプレックスでいっぱいで、泣き出しそうでした。

先生は七宝のテーマを終えて「みんながんばったわね」的なまとめに入っていました。
教室を歩きながら話していた先生が、ふと私の後ろで止まりました。
そして私の作品を手に取るとこう言いました。

「とっても静かな作品です。みんなとは違った、クリエイティブな発想です。こういう七宝のやり方もあるので、後で見せてもらって参考にしてみてね」

びっくりしている私の肩に手を置いて、先生は言いました
Good Job!

コンプレックスで泣きそうだったのをせっかく我慢していたのに、不意打ちでした。

「ムーン先生!あのジャパニーズの子、泣いちゃったよ~!」
「いいのよ。泣きたい時は泣けばいいの」

ふふっ。泣くのも「自由」なんだ。


to be continued...

次回は最近作った銀粘土の作品のご報告にしますね!