過日、スーパーを家内と歩いていたら二〇加煎餅を見つけた。懐かしく思い、思わず買った。帰って、それを酒を飲みながら食べた。甘く、独特の香りがする。粉の香りというか、焼いた粉の匂いというか。亡くなった父親が、九州に出張に行った帰りによく買って来てくれた。雲丹の瓶詰、河豚茶漬けなども持って帰った。煎餅には、紙で出来た独特のマスクが付いていて、あれが幼い心には少し怖くて、その煎餅もあんまり好きではなかったが。優しい父であった。煎餅を食べていると、思わず涙が出そうになった。