過日縁あってある業界グループに混じって鋸山を訪れた。

雨が降ったり止んだりの日だったが、不思議にも登山の間は晴れ間となった。

お陰で蒸し暑いことこのうえなく、気息奄々の惨状だった。山も低い高度と舐めていたが、いざ登攀にかかると石段が延々と続いて思いの外応えた。翌日は、ひらめ筋に痛みが残った。

地獄覗きは案外怖くはなかった。人が沢山並んで、かわりばんこに先端まで行った。フェンスもあって至って安全なのだが、何しろ足場がでこぼこだらけで歩きにくい。結局フェンスに縋りながら歩く恰好になる。

石段を登りながら

「どうせおっつけ行くところだから、よく見ておこう」と呟いた。

それを聞きつけたK氏が、「ぼくが蜘蛛の糸を垂らしてあげるよ」とのたもうた。

忝いと答えたものの、考えてみるとK氏はすっかり極楽浄土に行く心算なのには驚かされた。

それにしても、と

「行き先として、極楽はつまらなそうだね。庭先をぶらぶらするだけみたいで退屈だな。地獄は、サバイバルゲームみたいで面白そうじゃない。」と話したが、これには誰も答えなかった。