あした浜辺を さまよえば

昔のことぞ しのばるる

風の音よ 雲のさまよ

寄する波も 貝の色も

 

ゆうべ浜辺を もとおれば

昔の人ぞ しのばるる

寄する波よ かえす波よ

月の色も 星のかげも

 

はやちたちまち 波を吹き

赤裳のすそぞ ぬれひじし

病みし我は すべていえて

浜の真砂 まなごいまは

 

先日さる所で開催されたリサイタルでこの曲を聴いた。この曲はよく母が口ずさんでいたことをふと思い出した。母は優しかった。慈しみの眼で私を見た。もうそのような温かい視線に出会うことはない。

もう母は滅んでいない。そう思うと、無性に会いたくなった。母と過ごした日々は贅沢な時間であった。

最近、昔習い覚えた童謡を断片であるが、時々思い出すことがある。「私は誰、誰でしょね」などは、認知症のことかと思った。

「海は広いな大きいな」なども、良い歌であると思った。作詞者はさる高名な学者だったと何かで読んだ記憶がある。