ビートルズが世に出た頃のことを何となく覚えている。何かこうもやもやとした雰囲気が音楽界に漂っていて、父親が買っていた雑誌に、エルビスプレスリーも老いた、というような話しが載っていた。調べると、ビートルズの活躍した時代は1960年から1970年までと書いてあった。1960年のデビューと聞いて驚いた。私が中学に入ったのは1963年だった。今は無きW君が中学の時にビートルズを紹介してくれた。私はながら族でラジオをつけながら勉強をしていた。というよりあまり勉強もせずに、寝転がってラジオを聞いていたという方が実相だろう。1965年に「ヘルプ」が出たらしい。あれは衝撃的だった。そして相次いで「イエスタディ」がヒットした。当時、どちらかというと正統なロックバンドは1962年に結成されたローリングストーンズだったように思う。ビートルズをロックバンドに区分するのは、ちょっと抵抗があった。わが国でもいつの間にか、ビートルズの人気が旺盛となった。この間の事情は良く分からなかったが、高島ちさと氏のご尊父が音楽芸能界で有名な方で、ビートルズを手を変え品を変えおおいに宣伝したと述懐していた。これを聞いて少し合点がいった。

ビーチ・ボーイズは1962年から活躍した。

 いつかラジオで、リバプール・サウンドについて識者が語っているのを聞いた。かまやつひろし氏もさかんに意見を述べていたが、彼等もビートルズの音楽はどのような音楽から影響を受けたのかと訝しく思っていたのだろう。考えてみると、相当高度な内容の話しだったような気がする。港町のリバプールは海の玄関口で海外から多くの労働者が訪れるため、多様な音楽を演奏するパブやレコード店が存在し、そのような環境の下米国の大衆音楽ロックンロール、R&B、ブルースに熱中する若者が生まれた。彼らは刹那的な流行とは無関係に、彼らにとって必要な真の音楽を探し求めていたようである。もっぱら米軍放送や海賊放送などを聞いてエンジョイしていた。そういった土壌に呼応して、リバプールでは当時300を超えるバンドがひしめき合い、ダンス場、コンサート・ホール、クラブなどでプレイしていたと言われている。文字通りビッグバン前夜であったのだろう。R&Bがビートルズに大きな影響を与えたと、かまやつ氏が言っていたように思うが、記憶違いだろうか。

 1959年、ドン・ウィルソンとボブ・ボーグルのギタリスト2人によりベンチャーズの母体が結成された。当時、エレキギターは物珍しいものだった。ところで、エルビスプレスリーは、1953年にデビューしている。1950年代にチャック・ベリー、ファッツ・ドミノ、リトル・リチャード、カール・パーキンス、ジェリー・リー・ルイス、ビル・ヘイリーらと共にロックンロールの誕生と普及に大きく貢献した、いわゆる創始者の一人であり、後進のアーティストに多大なる影響を与えた人物とされている。彼らの背後には黒人がもたらしたジャズの影響があったようである。

 ドラムがテンポを刻む点が、大きく後のロック界に影響したものであろう。1950年以降うねりのように米国から英国に新しい音楽が押し寄せてきたのである。アップテンプのものが多かったが、ビートルズは後年になるほどゆっくりした音楽が多くなったようだ。それに、何より歌詞の持つメッセージ性が卓越していた。