僥倖に恵まれ、大きな自動車事故は1度もない。自動車事故を起こす人は、2度も3度もあるようである。ただし、巻き込まれた((と、あくまで当方は考えている。) ことは1度だけある。家内と車で走っていた時だった。目の前にバスが停まっており、その後ろに蹲る様に外車が停まっていた。信号の前でもあり、円滑な交通のためにも、この停車している車を追い抜くことが最善であった。丁度前を走っていた車も、そう思ったらしく、バスと後ろの車を追い抜いて行った。2台目がわれわれで、その後ろからもう1台追いかけて来た。私たちは3本の矢のようにバスと後ろの車を追い抜こうとした。1台目が抜けた後、われわれが反対車線にはみ出しながら停まっている車を追い抜こうとしていた。突然、バスの後ろに蹲って居た外車が飛び掛かるように、横手をすり抜けようとしていた我々の車にぶつかって来た。後ろの車は、辛うじて停車し、少し方向を変えてわれわれの車をすり抜けて行った。ぶつかった外車から青年がころがるように降りて来て、我々の車に駆け寄り窓を叩いた。私が助手席の窓を開けると、首を突っ込んできて「大丈夫ですか?すみません。」とはっきり言った。そして、私に「警察を呼んで下さい。」と頼んで来た。そのとき、プーンと酒の臭いがした。とっさに酒気帯び運転だなと思った。警察はなかなか来なかった。たぶん、30分位待たされた。そのうち、彼の彼女と思しき若い女性が自転車でやってきた。女性は携帯で誰かと話していたが、やがて一人の警察官が自転車で駆け付けた。その警察官は、例の女性の知り合いらしく、われわれに目もくれず、女性と若者と3人で額を集めてヒソヒソ話し合っていた。やがて、パトーカーが来た。くだんの警察官はパトカーに歩み寄り、警察官同志で何事か話しをした。その後、パトカーの警察官は顎でしゃくるように、行って良いよ、とわれわれに言った。この間、パトカーの警察官は下車もせず、現場の検証もしなかった。これには驚いた。後日、保険会社から先方の若者が強硬であり、われわれ夫婦を加害者と言っていると知った。交通事故については、裁判所がまとめた赤本なるものがあり、それによれば、われわれは追い抜き車で、われわれに非があると認定されるとのことだった。若者は、高級な外車に乗り、都心に住んでいて、かなり高名なデザイナーのような職業であると警察から聞かされた。親も、著名な人物らしかった。結局、われわれは壊された車を自弁し、先方からは1文も取れなかった。この事件は、警察の初動捜査にミスがあったと思っている。飲酒運転すら調べていないことには開いた口が塞がらなかった。

後日、家内は後遺症が治らなく、やむなく被害届を出そうと交番に行ったが、そんなことをすると旦那が牢屋に放り込まれるぞ、と脅され、追い返された。この件も、不可解である。