過去の判例では、「医業類似行為とは『疾病の治療又は保健の目的を以て光熱器械、器具その他の物を使用し若しくは応用し又は四肢若しくは精神作用を利用して施術する行為であって他の法令において認められた資格を有する者が、その範囲内でなす診療又は施術でないもの、』換言すれば『疾病の治療又は保健の目的でする行為であつて医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師又は柔道整復師等他の法令で正式にその資格を認められた者が、その業務としてする行為でないもの』(仙台高裁 昭和 29 年 6 月 29 日判決 昭 28(う) 第 275 号)」とされている。正確な判断ではないだろうか。
そもそも、この問題は明治18年において入歯および抜歯等をしていいか、して良いとすれば誰にそれが許されるのか、と言う問題が発端であった(高木 武「医業類似行為」6頁(東洋法学36巻1号、1992年))。
一方、昭和39年5月7日の最高裁第一小法廷(刑集第18巻4号144頁)では、あん摩、はり、きゆうおよび柔道整復が 「同法(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)一条に掲げるものとは、あん摩(マツサージおよび指圧を含む)、はり、きゆうおよび柔道整復の四種の行為であるから、これらの行為は、何が同法一二条の医業類似行為であるかを定める場合の基準となるものというべく、結局医業類似行為の例示と見ることができないわけではない。」と、これら4種の行為を医業類似行為の例示としているように見える。しかしながら、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の第1条は、医師以外の者で、あん摩、マツサージ、指圧、はりまたはきゆうを業としようとする者は、それぞれあん摩マツサージ指圧師免許あるいははり師免許又はきゆう師免許を受けなければならないと書かれている。どこにも医業類似行為の例示の様には見えない。結局、最高裁も、医師に注目して彼らが医業に携わると考え、医業以外の施術を医業類似行為であると考えたに過ぎない。すなわち第1条を素直に読むと、医師が元来行う医業が先ずあって、しかしながら一部の者は免許を得て技術的な部分を医業類似行為として追加的に行っていると言っているに他ならない。