医業類似行為とは、字面を見る限りは、本来医業と言うものがあって、それに類似する行為を指すことになる。さすれば先ず医業とは何か、と言うことが明らかにされなければならない。そのうえで、その医業に類似する行為として何が包摂されるべきか、と言うことが問題となろう。
ところが、ことはさかさまに定義をされており、医業類似行為として平成3年6月28日付で厚生省健康政策局医事課長による通達が、都道府県衛生担当部(局)長あてに、「医業類似行為に対する取扱いについて」(医事第58号)において、医業類似行為の例として、ひとつはあん摩、マツサージおよび指圧を、さらにはり、きゅうおよび柔道整復を取り上げている。しかしながら、これらの行為は免許を与えているものであるから、それ以外の免許を得ていない医業類似行為はあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第13条および柔道整復師法第26条に基づき処罰の対象であると述べている。すなわち平成3年に、厚生労働省は医業類似行為として、あん摩、マツサージ、指圧、はり、きゅうおよび柔道整復が含まれていると考えていることは明白である。しかしながら、これら以外にも医業類似行為として、他にも施術がいくつかあるが、それらは非合法なものであって、処罰の対象となるのだと述べている。結果としては、医業類似行為として、合法・非合法が混在していることになる。すなわち、厚生労働省の念頭には先ず医業というものがあって、その範疇外として医業類似行為があるとの分類であると考えられる。厚生労働省は、さらに平成23年1月31日付「厚生労働省に寄せられた「国民の皆様の声」の集計報告について」において、「医業類似行為には、法で定められたあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の行為以外に、法に定められていない カイロプラクティックや整体の行為も含むのかを教えて欲しい」とする国民からの質問に対して、簡単に「医業類似行為とは、あん摩・はり・きゅう・柔道整復といった法定の行為4種と、カイロプラクティックや整体のような、法定の行為以外の民間療法を含む概念である」と回答をしている。したがって、医業と医業類似行為の相互関係がいかなるものであるのかが問題となる。