色々な肩書が世間にはあるが、個人的にはエッセイストが好ましい。

若かりし頃、ヘルマン・ヘッセの小説に惑溺した。

こう、何ていうか、ヘッセが判ったような気がして、結構はまった。

が、ヘッセの神髄が何となく所々見えるようになったのは大分歳を重ねてからだった。

子供のころよく読んでいたが、ちっとも理解していなかったことに愕然とする。

小説に出てくる若き主人公は多感であり、世間の矛盾や人間関係に苦しんでいた。

やがて年を経て、彼は小説家や詩人となって一応世間的に成功したとして描かれる。

しかしながら、これは果たして成功したといえるのか?いつも疑問に思っていた。

たいていの人にとっては、出世するか、金持ちになってやっと自分自身が許せると思うものである。

それにしても、エッセイストである。

年来、エッセイを書いてみたい書いてみたいと言い続け、念願してきた。

「それじゃあ、書いてみなさい。雑誌に載せてあげるから。」

ある日突然そう言われて、原稿を渡された。

驚いた。何も思い浮かばない。

1日中真っ白な原稿用紙を前に、座っていた。

そんなものだ。ただ、そんなものだ。