短編小説:ミラの彼女(後編) | "Second Line Entertainment"代表 DancerHassy's Blog

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自分達にしかできない、新たなエンターテイメントへの挑戦。



~前編の解説~

毎朝何故か僕、Hassyの車の一台前にいる白のミラに乗った一人の女性。今日も勤務先まで彼女の後ろを走らなければならないと思っていたのだが、彼女が裏道に向かったことにより、普段の道を走る僕が先か、または裏道を走る彼女が先か、その二つの道が交わる交差点へとのカーレースが始まった、、、。






彼女は裏道へと向かった。

僕は渋滞へと並んだ。

普通なら裏道の方が早いのが当たり前なのだが、その裏道は少し遠回りになる。

逆にこの渋滞は普段は空いている道路だけに、たまたま信号に引っかかった車がその瞬間だけ多かったということもありえる。 

僕はその可能性に賭けたのだ。


賭けは正確だった。

幸運にも渋滞はスムーズに流れ、普段の1、2分程ロスしただけのように感じとれた。

実際のところはわからない。

何故なら僕の頭の中は彼女のことでいっぱいだったからだ。

今彼女はどこにいるのか。

あの細くでろ~んと垂れた目をぴくりともさせず裏道に向かった自信に満ちた判断を、僕はくつがえすことができるのか、、、そんな思いでいっぱいだった。


僕はいよいよ、問題の交差点の一つ手間の交差点に到着した。

問題の交差点は、どちらの道からも坂道をのぼった頂点にある。

しかもドラマチックなことに、その交差点はT字の交差点であり、

『T』の文字に照らし合わすとすると、彼女は左上から、僕は右上から、そしてお互いの勤務先へとは下方向に伸びる道へと曲がらなければならない。

つまり、もし僅差な戦いであればその交差点で

僕達は向かい合ってこの戦いの結末を知ることになる。

もちろん彼女がずっと先に行ってしまったり、またはその反対の場合も十分に可能性としては考えられる。

しかし、僕は期待していた。

ミラの彼女のあの顔を、

垂れに垂れ下がったあの細い目を真っ正面から見てみたい、、、。


信号が青に変わった。


僕はその期待を胸に、アクセルを踏んだ。


‐負けたくない‐


ゴールが近づく程にその思いは強くなり、アクセルを踏む僕の右足にも自然と力が入る。


しかしそのときであった。

一つの看板が目に入った。

『住宅地につき徐行せよ』


そうだ、、、。


この勝負は確かにどちらが先に着くか、どちらが早いかの戦いではある。


だがスピードを競う戦いではない。


あのとき、


あのでろ~んとふにゃふにゃ~んと垂れた目をぴくりともさせずとった判断か、

それとも僕の判断か、

どちらが正確だったのか、その『判断力』を競う戦いなんだ。


スピードをあげて勝ったところでそれは本当の勝利ではない。

僕は少しアクセルを緩めた。


あくまでも自然に、

いつもの自分のままに、

そして自分の判断に自信を持って僕は交差点へと向かった。



坂の頂点が見えた。


信号は赤。


向かう側には‐




誰もいない。



ただ僕の目からは、左側から信号が赤になる前にとスピードをあげて走り抜ける車が見えるだけだった。


僕が早すぎたのか?

それとも遅すぎたのか?


僕の期待とは裏腹に、この戦いの結末は誰にも分からないまま終わってしまった、、、


そう思ったときだった。



向かう側から一台の車がやってくるのが見えた。


朝の日射しに照らされながら、


その車のボディは白く輝いていた。


あの丸みがかった白いボディは、、、


ミラ。


そう、ミラの彼女だ。


こんなことがありえるのだろうか、、、期待していたことではあるが、いざ現実になってみると

僕はとても驚いた。



この時点で僕の勝利が決まった。

僕が50秒程先に到着していたということ。

そして僕が左折であり、彼女が右折だということ。


彼女が強引な右折をしないかぎり、彼女が僕の前を走ることはない。


勝ったんだ。


そして初めて見る彼女の本当の顔。



ミラーに映った顔と同じように、

何の特徴もないショートカット

細かく描かれた無数のシワ


しかし、その垂れた目だけは負けたショックからか、

ミラー越しに見たときよりもでっれぇ~んとぺっちゃ~んとしていた。

『今日も朝からオクラと納豆混ぜて食べてきたのに~』といった、

自分の努力が無駄になった悲しさをその垂れ具合は語っていた。


信号が青に変わる。


僕は余裕をもってアクセルを踏んだ。


勝者という誇りを見せつけながら。


僕の一台後ろの車が真っ直ぐ進んだのを待った後、彼女は右折し僕の後ろへと続いた。


初めて見る僕の背中にきっと自分の小ささを覚えただろう。



‐さようなら‐



僕はそう呟きスピードを上げた。



僕は自由だ。


僕の走行を妨げる者は誰もいない。



ミラーに映る彼女の姿はどんどんと小さくなっていき、ついには姿を消した。





きっと今日の1日はきっと楽しい1日になるだろう。


そんな期待を胸に仕事を始めた。




しかし何故だろう。



彼女のナス顔が頭から離れない、、、


彼女が口をあければまだオクラと納豆のネバけが歯に残って糸を引いているような、、、そんな幻覚さえも見えた。


その幻覚は僕に腹痛を与え、


吐き気さえも催した。




僕は仕方がなく帰宅させてもらうことにした。




彼女は一体何者なんだ‐。



帰宅し、僕はベッドに横になった。



気付けば夜になり、夕食ができていた。



そこには、、、




ナスがあった。




ナス子、、、



君はまだ僕を追いかけていたのか‐



ミラの彼女


彼女に背中を見せた者は


必ず不幸がおとずれる、、、




っていうかただの風邪やないかー。


最近疲れたまっとったやないかー。



連休でしっかり休養とりましょ~。



皆さん風邪とかインフルエンザには気をつけてね~。


以上、ふと思いついた短編小説でした。笑