翔さんと別れる覚悟は出来た、、、と
思った僕なのに、

今までの自分を後悔するのと同時に、
頭に浮かぶのは翔さんの笑顔、



まあ君に紹介されて初めて会った日、

僕の仕事が押して、
約束していた時間に行けなかったのに、
イヤな顔一つしないで、
僕が行くまで 食事をしないで
笑顔で待っていてくれた翔さん。


僕以上に翔さんの方が茶道教室や、茶会で
忙しかったのに、
自分の休みを返上して、
僕に茶道について
丁寧に優しく一から教えてくれた翔さん。

僕に付き合って 乗馬や日本舞踊にも
挑戦してくれて、
『潤君と一緒だから楽しい♪って
言ってくれた翔さん。

外でデート出来ないから、
翔さんのお家の庭でお弁当を食べて、
ピクニック気分を味わった事もあった。

思い起こせば 翔さんは、
いつも僕の都合に合わせてくれていて、
それに関して不満を漏らす事は一度も無かった。

いつの間にか 僕は、
翔さんが、
僕の都合に合わせるのは当たり前と思うように
なっていて、
自分でも気付かないうちに、翔さんに対して
驕った態度を取っていたのかもしれない。

こんな生意気な僕だから、
翔さんに愛想を尽かされるのも当たり前。


もう手遅れかもしれないけど、
翔さんにとって、
僕との事が〝イヤな思い出〟に ならない為にも
そっと身を引こうと決めた僕は、
必要最低限の物を取りにマンションへ。

野点が終わって、
マンションに帰って来た翔さんと
鉢合わせになったら気まずいからと、
急ぎ足で歩いていたら、


プップ〜気づき

後ろからクラクションを鳴らされ、
振り返ると、

その車の窓から顔を出したのは、、、


「潤ちゃんっ!!!」

「あっ、まあ君!」

「潤ちゃん ずっと探してたんだよ。
携帯に電話しても繋がらないしさぁ。」

「あっ、ごめん💦
携帯 切ったままだったの忘れてたよ。」

「ねぇ ところで何があったの?」

「えっ?なんの事?」

「翔ちゃんが めちゃくちゃ取り乱して、
潤ちゃんの捜索願いを出す、って
騒いでるんだけど、
潤ちゃん、翔ちゃんとケンカでもしたの?」

「ケンカは してないけど、、、」

兎に角 一緒に来てよ。
俺 『必ず潤ちゃんを探し出して連れて来るから
捜索願いは まだ出さないで!』って
言ってあるからさ、」



なんで?なんで?なんで?
どうして そんなに取り乱してるの?
僕の事なんか どうでもいいんじゃないの?

翔さんに寄り添って立っていたあの女性は、
翔さんの事を一番に考えてくれる
優しいカノジョじゃないの?