『わっ?なんだ、これ?』

足元がフラついて上手く歩けない。
そんな俺に気付いた潤さんが、

「もしかして 上手く歩けない?」

「はい、こんな女性物の靴 履いた事ないから、
グラグラしちゃってめちゃめちゃ歩き辛いです。」

「しょうがないなぁ。
ほら、俺の腕に掴まって。」

「はい、すみません。」

またとないチャンス!

言われた通りに
潤さんの腕にしっかりと掴まると、

俺に気を遣って
ゆっくりと歩いてくれる潤さん。

やっぱり 潤さんは、優しくてカッコいい。

このまま潤さんから手を離さないで、
潤さんを独り占め出来たらいいのに、、、と
思うけど、そんな事は出来る筈も無く、

あっという間に 
皆んなのいるフロアに着いてしまった。

そこは、
一見 ホテルのロビーみたいな、
落ち着いた雰囲気の空間で、

唯一 ホテルのロビーと違うのは、
クラシックの音楽が
小さく流れている、という事くらい。


そこには男女合わせて
15人程のフロアスタッフがいて
その人達に向かって潤さんが、

「皆んな 今日からウチで働いて貰う事になった
さくらちゃん、よろしくね。」
俺を紹介してくれた。

「「「は〜い!」」」

⁉️
俺、今日から此処では、さくらちゃん???
何か納得出来ない、、、、けど、

「今日から お世話になります、
よろしくお願いします///」

俺が挨拶すると、
「さくらちゃん 可愛い♡」っていう声が
あちこちから聞こえて来て、
めちゃくちゃ恥ずかしい。


「因みに 此処にいるスタッフは全員男性、
皆んな気のいい奴らばかりだから安心してねウインク

潤さんに聞かされてびっくり、

ここにいる女性だと思った人達、
俺と同じ女装だという事?

この綺麗な女の人達が皆んな男性だとは、
どうしても信じられない。

ブッキーからは、
『会員制のバー』としか聞いてなかったから、
スタッフ全員が男性だなんて知らなかった。

ここって一体、、、何?

怪しい、、、というか、
もしかして、ソッチ系の男性専用の会員制バー??



もう何がなんだか分からなくて、 
1人1人、自己紹介してくれたけど、
全く頭に入らなくて、
もしかして 俺とんでもない所に
来ちゃったのかも、、、と、ちょっと不安。

でも それと同時に、
異次元の空間に入り込んだような感じで
ちょっと興味をそそられる。

複雑な気持ちでいたら、

「ほら、そんな困った顔をしない!
笑顔を忘れないで、って言ったでしょ?
さくらちゃんは 可愛いから、
皆んなから愛されるから大丈夫だよ(^_−)−♡」


えっガーン
愛される??

それってどうゆう、、、


そんな事 言われたら、
これから どんな事が待っているのだろう?と
再び不安な気持ちが湧いて来てしまって、

その不安な気持ちが消えないまま
お客様を迎えた俺。

でも、
俺の不安は杞憂に終わり、

お迎えしたお客様は、男性も女性もいて
しかも 皆さん バイト初日の俺に凄く優しくて、

ビールの注ぎ方が めちゃめちゃヘタなのに、
『さくらちゃんに注いで貰ったビール
いつもより美味しい。』と言ってくれたり、

『さくらちゃんと話して楽しかった。』と
言いながら帰られたりして、

無事に閉店の時間を迎える事が出来た。


ドキドキのバイト初日が終わり、
再び潤さんに支えられながら、
さっきまでいた部屋に戻ると、

「お疲れ様、
ちょっと笑顔がぎこちなかったけど、
まぁまぁ合格かな、
頑張ったから ご褒美をあげないとねウインク

(@_@)!

潤さんからご褒美??
もしかしてキスかな?

そうだったら 嬉しいんだけど、、、