いくら懐かしい香りがした、、、とはいえ、
会ってまだ30分も経ってない、
名前だって知らない若い男の人、
その人からのキスを受け入れてしまった僕。
それが 自分自身 信じられない。
聞きたい事は山ほどあるのに、
何から聞いたらいいんだろう?
僕の困惑した表情を見て、
おいで、座って話そ。
そう言ってソファーに誘ってくれた。
何から話そうか?
そうだ、まずは自己紹介から、
櫻井翔、27歳 独身。
会社を経営している。
君は 松本潤君、19歳、大学1年生だよね?
うん、、、
心臓がバクバクする。
これから何が語られるの?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから…
信じられないかもしれないけど、聞いて欲しい。
そう前置きして、櫻井さんが語ったのは、
まるでお伽話のような話だった。
百数十年前、
俺は 〝人〟ではなく〝精霊〟だったんだ、
小高い丘の上に植えられた一本の桜の木の精霊。
いつも ひとりでいた俺に『一緒に遊ぼう』と
声をかけてくれたのが君だった。
俺は人からは見えない筈の精霊。
声をかけられた時は 驚いたけど
凄く嬉しかった。
それから
君は 毎日のように俺の所へ来てくれて、
一緒に遊んだり 話をしたり。
それは、俺にとって凄く幸せな時間だった。
君と共に生きて行きたい、
そう思っても
精霊の俺は 桜の木から離れられない運命。
櫻井さんの瞳が涙で潤んだ。
『覚えてる』
男の子なのにさくら色の着物を着ていた子。
近くに同じ年くらいの子がいなかった僕は、
毎日のように〝さくら君〟の所へ行って
一緒に遊んだ。
でも、
それを僕は〝夢の中の出来事〟だと思ってた。
あれは、
夢じゃなくて前世での出来事だったの?
ずっとずっと願っていたんだ、
『いつか 人間に生まれ変われますように』
『そして君に出会えますように』
『君と共に生きて行けますように』って。
強く願えば いつか必ず叶う、と信じて。
涙顔のままで微笑んだ櫻井さん。
櫻井さんの笑顔の中に、
桜色の着物の男の子が 見えた気がした。
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