色をまとう




最後のひと鉢だった。



バスケットに入った

ハート型の緑の葉が

ピンクに縁取られた佇まいに

一目惚れだった。






理性が

「増やしすぎでは?」

とささやく横で、
直感が

「この子だ」

と静かに指差す。


 

​「これって、

寒さで縁がピンクになるんですよ。

かわいくないですか?」


​店主が愛しそうに告げる。



​かわいい。


けれど、

植物にとって寒さはストレス。



​そのストレスに対抗するため、

自分を守る盾として、

葉は色をまとう。



​だとしたら、

リトルミッシーのピンクは、

かわいいだけではない

「がんばってるよ」のサイン。



守るために、

この色を選んでいる。



植物のストレスが、

こんなにも美しい色になるのなら。



​では、私は?


​私は今、どんな色をまとい、

ここに立っているのだろう。



ふと、陽のあたる窓辺へ

目をやる。







一輪だけ鮮やかに咲く、

赤いパンジー。






深い青紫のつぼみが

ほどけ始めた、

ヒアシンス。






そして、サボテンは。




​土から盛り上がった根本が、

茶色く硬く変化している。




枯れてしまったのかと、

一瞬、

胸がざわついたけれど。




それは「木質化」という、

自らを支えようとする成長の証。




それぞれが、

それぞれの「色」と「時間」を

生きている。



その小さな窓辺の風景を、

今日もわたしは、

そっと見つめている。