影を連れてひかりへ歩くとき
怖れは透明な盾になる。





​ひかりが強くなればなるほど、
足元は見えなくなる。


眩しすぎる世界は、
時に闇と同じくらい、
どこに足を踏み出せばいいのかを
忘れさせる。


​わたしのすぐ後ろで、
衣擦れのような気配がした。


透き通った
少女の姿をしたわたし。


彼女は今も、
別の時間を生き続けている。


​かつて、
彼女は
もっと小さかったわたしを背中に回し、
体全体で護ってくれた。


その背中に守られていた頃、
わたしは、
目の前の世界がどうなっているのかを
何ひとつわからずにいた。


​今でも、
彼女はひかりを怖がっている。


「信じないほうがいい。
また痛い目にあうよ」


裾を掴む指先から、
消えない震えが伝わってくる。


裏切られる痛みも、
足がすくむ夜の冷たさも、
彼女はすべて覚えているから。


​わたしは、彼女の手を握る。
ただ、
そこにいることを確かめるように。


そして、半歩だけ前に出る。
彼女の視界を塞がない程度に、
半歩だけ。


彼女の代わりに
ひかりを見つめ、
「ほら、大丈夫でしょ?」と
無言の背中で示すために。






​彼女が震えているから、
わたしは慎重に、
誠実に、
次の一歩を選び取る。


その臆病さは、
無謀な痛みを
わたしから遠ざけてくれる。


​とりあえず、
進めるところまで。


​影を連れて、
ひかりの方へ。



わたしたちは今日も、
言葉のない約束を交わして歩き出す。