Ⅰ.洞穴に戻る





ふと
体の奥で何かが
私を痛めつけていると感じた

見えない手が
内側からゆっくり締めつけてくるような痛み

倦怠感は
ただの疲れじゃない

カラダが
ココロの悲鳴を代わりに響かせている

痛みを感じないように生きていた
感じたら壊れるから
感じないという鎧で自分を守っていた

ドクターに言われたことがある
「君は痛みに麻酔をかけている
それはとても危険だよ
少しでも痛みを感じたら
すぐに助けを求めて」 

その言葉の意味がようやくわかる気がする

私はいま
痛みを感じている

それは
生きているという証

だから私は
布団という洞穴に潜り込む

光を閉ざし
音を遠ざけ
生きることだけに集中する

いまは考えない
息をして
丸くなって
獣に戻る時間
 
ーーー


Ⅱ.獣でいる



洞窟の奥の私は獣

考えることを忘れ
ただ息をしている

眠くなれば眠り
目が覚めれば体を丸め
喉が渇けば水を飲む

それだけで
世界とつながっている

かつての私は
言葉で自分を動かし
理屈で立ち上がろうとしていた

でも今は
体が知っているリズムにまかせる

頑張らなくていい時間
頭の奥の静寂が
少しずつ広がる

洞窟の外では
風が通り過ぎる 

それを感じても
まだ動かない

私は獣

生きている
それで十分


ーーー


Ⅲ.外に出る




光より先に
匂いがした
湿った土と風の匂い

それが
洞窟の外の世界だと教えてくれる

少しだけ顔を出す

眩しさに目が慣れなくて
まばたきをする

その中に
自分の息が溶け込んでいくのを感じる

私は獣のまま
外に立っている

匂いを嗅ぎ
風を確かめ
ゆっくりと体を伸ばす

世界はまだ遠くて


でも確かに生きている