✦ 生命の連作「獣に戻るとき」より
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今日のご飯は、やけに甘い

それだけで 
世界を信じてみようと思った 

あの頃の私は 
生きる理由を探してばかりで 
昼休み 
空腹にまかせて
お弁当を貪る自分を 
獣みたいだと思った 

でも 
そのときの私は
たしかに 
生きようとしていたんだ 

 口いっぱいにほおばる 
その勢いの中に 
涙よりも正直な
「生きたい」があった 

あの子を思い出すと 
胸があたたかくなる 

よく食べたね 
よく泣いたね 
よくここまで来たね


いま ひとくち噛むたびに
からだが「ここにいる」と答える

塩の粒が
あの日の涙みたいに光って

噛みしめた先から
笑い声が聞こえてくる