侍女になりたくなかった紫式部が中宮の侍女となった理由、宮中の人付き合いの難しさ、主人中宮彰子への賛嘆、ライバル清少納言への批判……。『源氏物語』の時代の宮廷生活、執筆動機がわかる!
・・・・・・
図書館で借りてきたのだが、「源氏物語」の評論かと。
が、新しい形の本で、小説なのかと思ったら、違うし。
紫式部が、一人称で自分のことを思い出しながら語っている。
紫式部が現代によみがえって、現代の言葉で、自分のことを書いたような、不思議な読後感。
著者は、山本淳子さん。研究者で大学教授。
「源氏物語」「紫式部日記」「紫式部集」をもとに書かれたそう。
紫式部は中宮の女房として出仕している。
女房とは、所詮「雇われ人」で、実家が零落した女性がなるものと自分で言っている。
彼女の家系は、道長と同じ「藤原北家」。
曾祖父は従三位中納言(五位から貴族)で歌人で有名な家だったが(ここは自慢気)、
祖父は、受領で従五位下。父も10年間官職なしで過ごし、やっと受領になった。
父が受領になって、やっと遅い結婚をするが、娘を産んで、結婚3年で夫は死去。
弟も微妙な出来で、彼女は「源氏の物語」の評判から女房に請われ、出仕。
家にいる妻や娘を「里の女」と彼女は呼んでいて、このあたりの微妙な違いを
切々と語っている。すごい冷静な筆運び。
他にも「召し人(めしうど)・女房が主人の愛人になること」の話も。
妻や側室の扱いもされない、日陰の存在。
女房とはそうなりやすい存在でもある悲哀。
女房といっても、貴族の娘がほとんどなのに。
こういった自分で見聞きし体験したことを、「源氏物語」に入れたと書いている。
中宮彰子の話も、興味深かった。
道長の娘で、天皇の中宮となり、息子を産み、息子は天皇になる。
はたから見るとすごい運勢の女性だけど、父の持ち駒として生きる悲哀も描いている。
実際にここまで書いていたのかな、と思うくらい。
清少納言批判は有名。
これもしっかり描いてある。が、気持ちもわかるとも。本当?
「枕草子の力」も書かれてて、確かにと思う。
いままでの紫式部のイメージとは、ちょっと違う、大人な女性のお話。