図書館で源氏物語に関する著書をいろいろ借りて読んでいる。
俵万智さんの「愛する源氏物語」も面白かった。
・・物語には795首の和歌が登場してて、一部解説しててなるほど~
 末摘花は「からころも」多用とか(笑)
 
酒井順子さんの「紫式部の欲望」はちょっと微妙だった。
「枕草子」はとっても面白かったのに~
 
何冊かの中で、特に興味深かったのが↑の本。
工藤重矩著
 
・・平安朝の婚姻制度についての論文。
  
一般的には「一夫多妻制」だったと言われてて、確かにそう思ってた。
が、この方は、「一夫一妻多妾制」だと論じている。
・律令では一夫一妻制。
・子の扱いに差がある。男の子は昇進の速度、娘は結婚相手。
・物語や日記を元に多妻制を論ずるのはおかしい。
 
 
「一夫一妻制」
 ・正式な結婚は1人のみ。他は非法的関係。
 ・初めから妻は妻として結婚し、妾などとは非法的なものとして関係が始まる。
 ・妻は離婚されない限り妻であり、離婚しないまま妾等と入れ替わることはない。離婚すれば再婚は可能。
 
「一夫多妻制」
 ・複数の女性と結婚ができ、その妻の間に優劣はない。
 ・正妻は優劣のない複数の妻たちの中から、しだいに事後的に決まる。
 ・離婚しないまま正妻と他の妻たちとは入れ替わり得る。
 
 
この論点で源氏物語を読みこんでいき、一夫多妻制の矛盾を書いている。
確かに納得できる内容。
 
当時は葵の上のように、元服と同時に親の決めた人と結婚するのが常識だった。
当然こちらが「妻」。普通はこの女性と女性の実家で同居する。
源氏は同居してなくて、父の妻に夢中なので宮中にいたという設定に。
だから六条御息所の立場は微妙だったわけで・・・
葵の上の死後、六条御息所の女官が我が主君と源氏は結婚するかもとか言ってたわけだ。
多妻制ならこんな事言わなくてもいいもの。
 
紫の上に対する態度もだね。
葵の上の死後、内緒で結ばれる。なぜ内緒にしてたか疑問だったのよね。
既に関係があるのに内緒にして、親に知らせ袴着の儀式(女性の成人式)とかしてあげてる。
何もしないまま関係を持つと、完全に日かげの身になっちゃうらしい。
それでも妻ではなかったわけだ(親の庇護のない関係、女性の実家に住んでないし)。
後に女三宮の出現で、あっさり妻ができちゃう。
女三宮の父(朱雀帝)にとって、紫の上は妻には見えなかったってことね。
他の女性でいくと、玉鬘。
彼女に求婚した髭黒大将は、妻と離婚して求婚してる。
確かにそうなってるね。実家に戻しているもの。
多妻制ならそんな事しなくてもいいのに。
 
現実にも藤原道長の妻子について書いてあるけど、妻の子と他の子では昇進に差があるし
天皇に入内したのは妻の子のみ。
 
女性の実家の力の差と説明してるのも読んだことあるけど・・・
こちらの方がすっきりして分かり易い。
基本、実家の強い女性が妻になってるわけだが。
元服時に決めたら、そうなるわね。
チャレンジャーな貴族はいなかったんかい?