チーさんキノコを食べるの巻。【前編】 | チー旅。〜世界一周する(仮)〜



【はじめに】

昨日の記事でも書きましたが、

読むも読まないもあなたの自由です。

読んでいただけるからには

気を悪くなさらないことを願うばかりです。










私はシャーマンを探しい行った。

シャーマンに会いにバスでぐねぐねの山道を6時間。




辿り着いたそこは、本当に山奥の小さな村だった。

名前はウアウトラ。

標高が高いらしく歩くだけで息が切れる。

3,000mぐらいはあるのかな。






ここに昔、マリアサビーナは住んでいた。

その家が今もあるということは知っていたので

マリアサビーナの住んでいた家へ向かった。

そこに、マリアサビーナの孫がいて

現在受け継いでシャーマンをしていると聞いていた。

その孫に会いに。




タクシーはこの高い山をさら登った。





マリアサビーナの家には簡単にたどり着くことが出来た。

村の要所要所に「マリアサビーナの家」という矢印の標識があった。

それだけ観光化されてる様子。




家に入る時、20ペソを払った。だいたい150円ぐらい。

家の中は展示室のようになっていた。



マリアサビーナの写真。




当時実際に使われていたトルティヤを作る道具。




マリアサビーナが着ていた服。




中は展示用にともてキレイに改装されていた。




そこで先客に展示品を説明をしている男性がいた。

「あなたがマリアサビーナのお孫さんですか?」

彼は、マリアサビーナの孫ではなくひ孫だった。

セルモン・ガルシア・マルティネスさん。この時41歳。

情報で聞いていた孫は彼のお父さんだった。




現在はひ孫のセルモンさんが

国家公認のシャーマンとして儀式が行えるらしい。

彼は私にキノコの儀式をやりたいか?と尋ねた。





私は少し、迷った。




実はマリアサビーナの血を引くシャーマンの元で

儀式を受けた情報は一切出てこなかった。

彼が安心できるシャーマンという保証がひとつもないし

ここで儀式を行った人の前例もない。





多くの外国人がキノコを食べにこの村にやってくる。

その中で日本人もとても多い。

その多くがイネスさんと言う別のシャーマンの元を訪ねる。

マリアサビーナと同じく、女性のシャーマンだ。

彼女は幼少期、よくマリアサビーナの家に遊びに行っていて

マリアサビーナの一番弟子のシャーマンらしい。

とてもいい人らしく、その情報はインターネットでたくさん出てくる。





私は、彼の話を聞いた。

出会ったばかりの彼のことを何も知らないが、

正直、この時もう自分の好奇心を抑えられなかった。

今日の夜9時から。800ペソ。宿泊も含む。

私は持っていた700ペソだけ払って今夜の約束を取り付けた。

足りない分は後でいいよと言ってくれた。

夜8時ごろおいで、儀式の前はあまり食べないで。



セルモンさんは、タクシーより安い、

コレクティボ(乗り合いタクシー)があるよと教えてくれた。

山を下りてコレクティボ乗り場まで送ってくれた。




そうして私は一度ホテルへ戻った。







メキシコは暗くなるのが遅い。

夜8時頃でも夕方ぐらいの明るさだ。

コレクティボで行けるところまで運んでもらい、

未舗装のへんぴな山道を歩いて登る。

だんだん暗くなってきて

似たような山道に私は迷ってしまったので

彼に家に着いたのは8時半頃になってしまった。





家に着いてドアを開けると

セルモンさんと、とある女性が私を待っていてくれた。

その女性はセルモンさんの奥様、クリスティナさん。






「どうぞ、座って。」

木の椅子に腰かけて、あたりを見渡す。

家と言っても床は打ちっぱなしのコンクリート。

壁と屋根はトタン板。

どう見てもこの寒い山奥で人が住むに適していない。






セルモンさんは、すぐに儀式を始めなかった。

私としばらく談笑した。

私も、すぐに始めて欲しい気持ちはなかった。

初めてのキノコ。

好奇心はあったけど、少しの緊張もあった。




私はセルモンさんとクリスティナさんと話しながら

だんだんリラックスしていった。

会話はなんてことない内容。

日本は暑いか。ここから飛行機でどのくらいかかる?

メキシコはどこへ行った?オアハカは良い所だっただろう。

兄弟はいるのか?17歳ぐらいに見えるねあなた。


などなど。



セルモンさんは静かではあるがやさしい笑顔でよく笑う人。

クリスティナさんも笑顔の素敵なやさしいお母さん。

その笑顔に少しの緊張がだんだんほぐれていった。





「コーヒー飲む?」

クリスティナさんが私に尋ねた。

「はい。ミルクを入れてください。」

私は答えた。






どのくらいセルモンさんと話しただろう。

1時間ぐらい経っていたと思う。

開始を予定していた夜9時はゆうにまわっていた。




クリスティナさんが何かを持ってきてセルモンさんの前に置いた。

バナナの葉にくるまれたキノコだった。



こんなにフレッシュな状態なんだ。

これを私はこのあと生で食べる。

お腹を壊しそうだな…。




セルモンさんはひとつずつ丁寧に

キノコについている砂をとる。

その作業が終わるとまたバナナの葉にくるみそっと置いた。




そうしているとクリスティナさんが

部屋の隅にあるキリストなどが飾られている祭壇の前に

ござを敷き、その上に毛布を敷き、クッションをふたつ置いた。



祭壇の真下に置かれた小さな鉢に

ハーブの香りのする粉をふると、

白い煙といい香りが立ち込める。





セルモンさんはひざまずいて

バナナの葉っぱ越しにキノコを煙にくぐらせながら

小さな声で呪文を唱えている。




全ての行動が神聖に感じる。

写真はひとつひとつ許可を得て撮った。





「こっちにおいで。」

セルモンさんがそう言ったので

私は靴を脱いでござに上がった。

「少しずつ食べて。」

言われた通り、小さいキノコをかじってみた。

小さいキノコの味は意外に悪くない。

「これ、全部食べるの?」

「そうだよ。」


私はゆっくり小さいキノコを全部食べた。

大きなキノコがふたつ残った。

その大きなキノコは別物かと思うほどまずかった。

全部で10個ぐらい食べたんだろうか。





全て食べたら、儀式の部屋に案内された。

儀式の部屋はさっきよりオンボロだ。

トタンの壁は隙間だらけ。もうほぼ屋外。とても寒い。



ここの真ん中にイスが置かれ、私はそこに座った。

セルモンさんは横で私の様子を見ている。

「30分ぐらいすると感じるよ。」

キノコを食べると壁や天井が

ぐにゃぐにゃに見えたりすると聞いていた。

私はその瞬間を待って、

目の前で揺れるロウソクをじっと見つめていた。

15分ぐらい経ったところで、何も変化はない。

体に異常も感じない。

横にいるセルモンさんの顔を見る。




「何か感じてきた?」

「まだ、なにも。」





それからだんだん、体が少しずつ重くなり始めた気がしてきた。

イスの上で膝を抱えて頭を伏せる。

首が座らない。腕も掴んでいないと保てない。





「どう?」

「まだ何も見えない。でも…重い……。」




私が見ている景色は何も変わらない。

ロウソクをじっと見つめているけど、それは普通だった。



私が座っていられなくなったのを見て

ふたりがそこにござを敷いてくれた。

靴を脱いでござに上がり、持ってきてくれた毛布にくるまる。

腕で突っ張って体を支えてなんとか座っている状態。

このあたりから、奥歯がガタガタ震えだした。

ござは土の地面に直に敷いているのでとても冷たい。



「腕を出して。」

セルモンさんにそう言われ

力を振り絞って服の袖をまくる。

両肘の内側に何やら砂を塗りこまれた。

呪文を唱えながら。



毛布にくるまりながら私はとうとう横になった。

座っていることが出来なくなった。



それを見たふたりはここは寒いから部屋に戻ろうと言った。

立ち上がって靴を履く。

ふらつく。まっすぐ歩けない。



最初にキノコを食べた部屋に着くと

そこに敷いてあるござに倒れ込んだ。

倒れ込んだ私にクリスティナさんが毛布を掛けてくれた。

私は膝を丸めて顔まですっぽり毛布にくるまった。




セルモンさんが何か言っている。

でも、分からない。




「これで、終わりなの?」

私は体がだるくなっただけでまだ何の幻覚も見ていない。

歪んだ景色も、悪魔も、謎の光も、何も見ていない。

しかもここまでで結構な時間が経ったと思う。

もしかしてこのまま寝て終わりなのか。




「もうあと1時間。」

クリスティナさんが答えた。

それを聞いて私は安心した。

ふたりは部屋の奥へ行った。





ここから、自分の体にどんどん異常が起こり始める。






明日につづく。

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