「ここから先は、ヒッチハイクで行こうと思うんだ…。」
ふみちゃんは、いつも私にやさしい。
私にだけじゃなくみんなにやさしい。
人を傷つけることは絶対しないように
周りをよく見てるし、同調してくれる。
私がそう言うと、
ふみちゃんが口を開いた。
「最初、チーコからそれを聞いた時、
やっぱりチーコすごいなと思ったよ。
私はビビりだからできないからね。(笑)
でも、女の子は気をつけなきゃいけないことが多い。
殺されるとかもそうだけど、性犯罪とかね。
もしそんなことになったら、一生その傷抱えて生きていくことになる。
そうなったら、きっと死んだ方がマシだよ。親には悪いけど。
私はチーコを応援したいけど、もし何かあった時、
なんで止めなかったんだろうって、自分を責めると思うし。」
意外な、言葉だった。
いつだって同調してくれる優しいふみちゃんの口から
そんな言葉が出たから、私はよけいハッとした。
自分の好奇心を止める必要なんかないと思ってた。
思ったままに突き進んで良いものだと思ってた。
でもそれは、
周りで助けてくれた人のことを何も考えていなかったんだ。
自分は大丈夫。
そんな保証はこの世にどこにもない。
一気に、親や、友達や、職場の人や、お客さん達の顔が浮かんだ。
自分の認識の甘さ。
ごめん。
ありがとう。
そんなことを教えてくれたふみちゃんとは今日でお別れ。
約2週間、一緒にいた。
今日から別々の町へ行く。
ふみちゃんはとても情が厚い人。
私をバス停で見送る時、泣いた。子どもみたいに。
「チーコと逢えて本当に良かった。ありがとう。」
私は旅中で誰かと別れる時、ほとんど泣いた事がない。
感情爆発させて別れを惜しむふみちゃんが可愛かった。
そして、私も泣いた。
もらい泣き、初めてしたかも。
しかもこの人、今朝ベッドの上でも一回泣いてる。
どんだけ泣くねん。
ふみちゃん本当にありがとう。
2週間ガキのお守、大変だったね。
ふみちゃんのおかげで全てのことが楽しかった。
チーさんのこと、忘れないでね。
元気でね。またどこかで。
迎えに来たバスは新しいようでとてもきれい。
どこかで、「ボロバスがよかった…」と思っている自分。
味を占めると、もう一回もう一回と思う悪い癖。
外は暑そうだけど、こっちは冷房が効いているので快適。
ぱっと思いつきで、あんなこと言ったわけじゃないんだ。
ひとしくんに言われた「最後までワクワクし続けろよ。」の言葉が
ずっと頭から離れなかった。
とんでもないワクワク抱えて日本を出て
最初は目に飛び込んてくる光景全てに興奮した。
そんな毎日が続いてワクワクのハードルも上がって
日々、ワクワクすることを探す旅。
それが私は楽しかった。
今は、何にワクワクする。
もう終わろうってところで私は最後に何がしたい。
どんな最後にしたい。
いろいろなことを考えていたつもりだったけど、
なにも見えてなかった。
自分の考えは浅はかだった。
昼前に出発したバスが到着したのは
あたりがもう真っ暗な頃。
はて、ここはなんちゅう町だろう。
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